「医療用N95マスクは毎日新型コロナ患者を診る医師に使ってほしいから、私は着けません。でも私自身が感染したらクリニックを開けなくなる。可能であれば、発熱患者はオンライン診療を選択肢に含めてほしい」(石井院長)

 オンライン診療の予約から問診、診療、決済までに対応するアプリ「クリニクス」を運営するメドレー(東京都)でも、4月の診療回数が前月比4倍に増えた。医師であり代表の豊田剛一郎さん(36)も言う。

「感染症流行下での通院は患者にも医師にもリスクがあります。対面診療とオンライン診療を組み合わせて適切に使うのがいいと思います。感染の不安を訴える人に対しても、トリアージのような使い方ができます」

オンライン診療は、慢性疾患を持つ患者にとっても重要な選択肢だ。大学病院では、慢性疾患を中心にオンライン診療を導入している。感染を恐れ通院をためらう「受診控え」が増えているからだ。薬を飲まず放置して悪化したり、合併症を引き起こしたりすれば命の危険もある。(ライター・井上有紀子)

AERA 2020年6月1日号より抜粋