オランダでは3月16日から5月上旬まで、義務教育校の休校が確定している。小学校はICT化が進み、普段から授業に教育ソフトなどを使用しているので、子どもたちは比較的スムーズに自宅学習に移行することができた。一方、完全な外出禁止令は出ていないものの、「外で遊ぶときは他人から1・5m離れる」などのルールができた(12歳以下に対しては4月下旬に解除)。休校中はなるべく家にいることが推奨されているため、子ども達の外出は家の近所の散歩くらいになってしまっている。

 そんな近所を歩くだけの時間を少しでも楽しいものに変えようと、オランダの各地で「クマ狩り」が始まった。住宅街の窓辺にクマのぬいぐるみを置いて、散歩中の子どもたちに見つけてもらうという、かわいらしいアクションだ。地域によっては「クマ狩り」のSNSグループができ、地図アプリでクマのありかを確認できる街もある。街中のクマをすべて見つけたらもらえる賞状やメダルを作って提供する企業も出てきた。

 オランダはもともと春(4~6月)に、街をあげての4日連続ウォーキング大会(5キロメートルまたは10キロメートルの選択式)が全国各地で実施されるほど散歩が好きな国。そんなオランダ人の性質に、この「クマ狩り」のアクションはばっちりはまったようだ。

 フランスでのそれは突然だった。「イタリアは大変だね」と、お隣の国のニュースをひとごとのように見ていたら、フランスも同じことになってしまった。3月17日、フランスでは外出が大幅に制限される「外出禁止令」が発令され、国民は長い「監禁」生活に入った。マクロン大統領はテレビ演説で「私たちは(ウイルスとの)戦争状態にある」と何度も繰り返した。

 小学生の日々も一変した。子どもたちに許される外出は毎日1時間以内の散歩やジョギングのみ。登校しない代わりに、朝8時半には自宅で勉強を始める。自分が通う学校の専用ウェブサイトにアクセスし、国民教育省(日本の文部科学省に相当)作成のカリキュラムから、事前に先生から指示された部分をダウンロード。教科書を見ながら課題をこなし、解答例を見て自己添削、その結果をアップロードする。その後、時間があるときは、フランスの国営テレビ局で放映されている教育番組を見る。

 インターネットは自由時間の救世主でもある。たとえば、芸術の都・パリの、そのまた中心である「オペラ座」なども、バレエやオペラ、クラシックコンサートなどの過去の演目を無料配信。普段なかなか見ることができない最高レベルの芸術に触れられるのは、「監禁」生活中の数少ない楽しみの一つだ。

(海外書き人クラブ・柳沢有紀夫、倉田直子、兒玉ゆきこ)

※月刊ジュニアエラ 2020年6月号より

ジュニアエラ 2020年 06 月号 [雑誌]

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