林さんは言う。

「少しずつですが地元にも活気が出てきました。今後はお城も観光資源としてとらえ、地域全体を盛り上げていきたいと仲間たちと話しています」

 そうした中、昨年末あたりから歴史ファンの間でじわじわ来ているのが「武将印」だ。御城印の武将バージョンで、武将名のほか、武将のイラストや花押、一言コメントが入っていたり、デザインも内容もさまざま。「御将印」などとも呼ばれ、全国に40近くあるという。

 すでに二十余の武将印を集めているというtakubomayさん(ハンドルネーム、30代)。武将印の魅力は?

「武士の生き様からその土地の歴史までひもとくことができます。武将印の中央には武将の名前と家紋や花押があり、武将たちがお家繁栄のため、何を背負い戦っていたかわかります」

 また、例えば真田信繁(幸村)の武将印は「日本一の兵」、織田信長の武将印には「美濃を制する者は天下を制す」などとコメントも添えられていて、武将たちがどんな生き様を見せたか知ることができるとも。

「さらには、武将の名前が土地名になるなど、その地の歴史を知るきっかけにもなります」(takubomayさん)

 コロナ禍で外出もままならない「巣ごもり生活」がつづく。でも、家でも楽しめるのが御城印であり武将印だ。買ってきた御城印や武将印を眺めながら楽しかった旅の思い出に浸ったり、コロナ終息後にどこの御城印や武将印を買いに行こうかと調べたり……。外出自粛の状況下、通信販売などで取り寄せができる御城印も出始めた。自称「御城印探究家」で、200枚近い御城印を集めているという静岡県在住の隠居音屋KK(いんきょおとやケーケー)さん(ハンドルネーム、50代)は、すでにいくつかの御城印を取り寄せ、攻城できる日が来るのを心待ちにしているという。

「お取り寄せの御城印を眺めてニヤニヤしながら、攻城への想いを巡らし旅の計画を立てる……。実は、旅の一番楽しい時は計画を立てている時ではないかと思います」

 たかが紙切れ一枚、されど紙切れ一枚。魅力は、無限大だ。(編集部・野村昌二)

AERA 2020年5月25日号より抜粋

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野村昌二

野村昌二

ニュース週刊誌『AERA』記者。格差、貧困、マイノリティの問題を中心に、ときどきサブカルなども書いています。著書に『ぼくたちクルド人』。大切にしたのは、人が幸せに生きる権利。

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