「つまりは“個別最適化”です。そのためには手法を変えなくてはいけない。アナログの一斉授業では限界がある。コロナをきっかけに教育現場がそのことに気づき、変わってくれたらと思う」(蓑手さん)

 5月中旬に入り、前原小のある東京都でも6月の学校再開が見えてきた。とはいえ、秋冬の感染流行第2波にも備えなくてはいけない。台風、地震といった災害による休校も起こり得る。もし、オンライン授業が可能になれば、子どもたちが学校という「同じ場」にいなくても、学びを止めなくて済むのだ。

「学校がなくても、デジタルでつながっていれば主体的に学べる。そんな子どもを育てたい」(同)

 ここまで述べたように、コロナ禍にそこここで急発進したICT教育は、まだごく一部の子どもたちしか恩恵を受けていない。この難局を、ICT教育推進のチャンスにできるだろうか。

 都内某区に住む40代女性の長女は4年生。中学受験に備え春休みから塾通いをさせる予定が、コロナの影響で入会さえできなかった。

「塾に通う子はオンラインで双方向の授業を受けられるし、そこで友達とも会える。でも、学校とオンラインでつながらず、塾もないうちの子は、友達と顔も合わせられない」

 誰一人置き去りにしない。そう考えると、多くの子どもが放置される。格差に気を取られるうちに、格差が進んでしまうのだ。

 大人のジレンマに、子どもを埋もれさせてはいけない。(ライター・島沢優子)

AERA 2020年5月25日号より抜粋