前原小の近隣の学校に子ども2人を通わせる川原美紀さん(49)は休校以来、休校支援の様々なオンライン講座を探して親子で利用している。

「ICTをスピーディーに有効に使えている学校と、そうではない学校で、どんどん差が開く一方な気がする。休校中に導入が進まなければ、結局何も変わらず、ということになってしまいそう。やれることから早く対応してほしい」

 小金井市教育委員会の大雅士教育長(62)は5月11日、市のホームページで保護者へ「まずはやってみよう」とYouTubeで呼びかけた。

「平等性を図りながら少しずつ推し進めたい。3密を避けた状態にしたうえで、ロッカーにプリントを取りに来てもいいし、メールや電話でもカバーする。その一方で、ビデオ会議(Zoomを使用した朝の会)に取り組むことを目指す。得意な先生だけがやるのではなく、教員も一丸となってオンライン化に取り組んでいきたい」

 教育委員会の決定事項は通常は各学校長を介する。教育長からダイレクトに伝達されるのは異例なだけに、本気度が伝わってくる。

蓑手さんは400人が集った「双方向型オンライン」授業を軌道に乗せた米ニューヨーク育英学園の教員らを講師に招いた無料のオンラインセミナーで講師も務めた。コロナ以前からICTを駆使した授業を実践し、その有効性を実感してきた。

 例えば、5年生の算数授業。導入、展開から、考えさせ、まとめたら小テストという流れで、クラス全員が同時に同じ内容を学ぶのが一般的だ。だが、蓑手さんは、冒頭で10分説明したら、1人1台のパソコンを使って子どもたちに自由に学習させる。

 1時間で一気に6時間分の単元を進める子がいる一方で、3年生の計算問題をやる子もいる。聞いてもわからない一斉授業を無理に受けるよりも、パソコンの中で「個人授業」をさせたほうがその子にとってプラスだ。「わからない」という、大人の目に見えない子どもの孤立をICTは救ってくれる。

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