城好きの心をつかむ御城印の数々。全国で280近い城や城跡で発行され、今も増え続けている(写真:攻城団提供)
城好きの心をつかむ御城印の数々。全国で280近い城や城跡で発行され、今も増え続けている(写真:攻城団提供)

「御城印」をご存じだろうか。城が発行している登城記念証で、ハマる人が続出している。地域の活性化にも。今年になって「武将印」がさらにブレークの予感。その心は? AERA2020年5月25日号の記事を紹介する。

【写真特集】心を掴まれる!「御城印」が導く 未知との遭遇

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 写真をご覧あれ。

 ズラリと並んだお札のようにも見える品の数々。これが今、城や歴史好きの心をつかんで離さない御城印(ごじょういん)だ。

「デザイン的には、城名や城主の家紋、花押、城のイラスト、揮毫(きごう)のカッコよさなどが見どころとなります。手すき和紙や地元産品の和紙を使用している力作もあります」

 熱く語るのは、静岡県在住の隠居音屋KK(いんきょおとやケーケー)さん(ハンドルネーム、50代)。自称「御城印探究家」で、200枚近い御城印を集めているという猛者だ。

「御城印」といっても初めて聞くという人も少なくないと思うが、ひと言でいえば登城の記念証だ。一見、「御朱印」に似ているが、全く無関係。御朱印が社寺に参詣した証しであるのに対し、御城印はその城を訪れた記念。そのため御城印は手書きではなく、ほとんどあらかじめ和紙などに印刷されている。1枚300円程度で、サイズはまちまちだが縦16センチ×横11センチのものが多い。

「御城印は現地に行かないと入手できないものがほとんどです。現地に行けば、城下町を歩き、地元の店で飲み食いをし、お土産屋を覗いたりもします。歴史と街並みや空気、地元愛も体感できるのが御城印の魅力の一つです」(隠居音屋KKさん)

 御城印の先駆けは、1990年ごろ松本城(長野県松本市)が販売を開始した「登閣記念証」にあるとされる。しばらく広がりはなかったが2016年4月、郡上八幡(ぐじょうはちまん)城(岐阜県郡上市)が販売を始め、売上金の一部を地震で被災した熊本城の復興支援で寄付したことが話題に。やがて他の城や地元の観光協会などもつくりはじめ、SNSで拡散され認知度が高まり、メディアでも紹介され、昨年から一気にブームになった。

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野村昌二

野村昌二

ニュース週刊誌『AERA』記者。格差、貧困、マイノリティの問題を中心に、ときどきサブカルなども書いています。著書に『ぼくたちクルド人』。大切にしたのは、人が幸せに生きる権利。

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