藤田:私たちも分断社会と呼んで問題提起していますが、本当になければならない仕事って何なんだろう、我々の生活はどういう人に支えられているんだろうということを考え直すきっかけにしなければなりませんね。

東:10年前だったらオンラインじゃできないことも多くて、ある意味、社会全体でリスクをシェアできたと思うんです。けれどネットが発達しすぎて、身体的接触をしなくていい「オンライン階級」が生まれた。俺たちは外に出ないけれど、出なくちゃならない人は頑張ってねという社会になってしまったんです。

藤田:社会の歪みですよね。

東:今回、その分断がくっきりと表れて加速しています。ポスト・コロナの社会でも、より一層階級化が進んでしまいそうです。このことをもう一度見つめなおして、もっとリスクを社会全体でシェアする方向に歩み出すのが、あるべき一つの目標だと思います。

──「緊急事態」の長期化は、コロナ後の社会にも深い影を落とす。第一生命経済研究所の永濱利廣首席エコノミストは5月7日、5月末までの緊急事態宣言期間で69.9万人が失業するという試算を発表した。

藤田:ポスト・コロナの社会に期待したいのは、生活困窮が当たり前にありうることだと皆が想定することです。生活保護などの社会福祉って、かわいそうで情けないものなんだという意識が非常に強いんです。

東:気軽に社会福祉を受けていいという意識になっていないですよね。働きなさい、まずは家族を頼りなさいと。

藤田:今は制度的にもそうなんです。でも、コロナによって程度の差こそあれ、これまで通りの生活が送れなくなった人はたくさんいます。福祉は怠けている人、特別な人が受けるものじゃなくて、もっと普遍的に生活保障をするためのものなんだと社会全体が理解する機会にしたいですね。

東:藤田さんが問題提起されたナインティナイン・岡村隆史さんの「コロナが明けたら美人さんが風俗嬢をやる」という発言も、生活保護を受けるくらいなら性風俗で働くんだという発想が社会にあるからこそですよね。

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