写真:金蘭千里高校提供
写真:金蘭千里高校提供

 揺れる大学入試改革のなか、昨年に引き続き受験生の安定志向が予想される。今年は新型コロナ感染拡大も相まって、一般入試のみならずAO・推薦への影響も必至だ。AERA 2020年5月25日号では「AO・推薦入試」を特集する。

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 多様な入試形式をチャンスと見るか、リスクと見るかは生徒次第。だが、国立にせよ私立にせよ今年の受験生の前には前例のない大きな問題が発生している。

「浪人できないプレッシャーがある」

 そう指摘するのは、大学通信の安田賢治常務だ。昨年に英語の民間試験の活用と、国語・数学の記述式問題の導入が見送られて大揺れの大学入試改革の中、できるだけ現役で進学したいと安定志向に走る生徒が増えているという。安田常務は言う。

「すでに受験傾向に変化は起きています。昨年は難関大の一般入試を避けて、推薦やAOを選ぶ生徒が増えました。今年はさらにその傾向が強まるのでは」

 追い打ちをかけるのが、新型コロナウイルスだ。日本も4月に緊急事態宣言を発令。授業やホームルームをオンラインに切り替える学校もあるが、対応にばらつきがある。先が見通せない大学入試改革とコロナ禍の「ダブルショック」が受験生を襲っている。

 萩生田光一・文部科学相は9月入学導入の検討やAO・推薦の募集時期をさらに遅らせる必要があると示唆。具体的なスケジュールは見えていないが、大学側にも配慮を求めた。ただ、9月入学には複雑な問題が絡み合う。茨城県の私立江戸川学園取手高校の代淳教諭(41)は指摘する。

「9月入学に切り替える案もありますが、空いた半年間の財源や教育をどうするのかという問題があります。生徒や保護者に情報を届けたくても、コロナ禍では提供できる情報さえない状態なのです」

 一方、コロナ禍の影響が少ないと言い切る学校もある。大阪府にある私立金蘭千里高校だ。

 4年前からICTに投資してきた同校では、YouTubeなどの動画配信サービスを使い、4月以降も全授業を通常の時間割通りに実施。生徒とのやり取りは学校教育向けのクラウドサービス「Classi」などを駆使し、進路希望から悩み事までヒアリングしているという。

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福井しほ

福井しほ

大阪生まれ、大阪育ち。

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