登場する漫画家は「それぞれの画風で」描き分けられているのが楽しい。美内さんは『ガラスの仮面』の北島マヤを思わせ、三原順さんは『はみだしっ子』の登場人物さながら。個性的な画風が共演して違和感がない、笹生さんの並々ならぬ画力がうかがわれる。

 80年代になると自身の作品が忙しくなった笹生さんはアシスタント業から離れる。30代で第2子が誕生したのを機に漫画家を引退したが、40代になってから同人誌活動を開始した。早世した三原さんの作品復刊を呼びかけたり、原画展の開催に協力したりするなどの活動でも知られている。

「シュラバは大変ではあったけれど楽しかった。先生の思いがけない言葉を聞け、作品が生まれる現場に立ち会えるのは役得だったし、みんな若くて元気でした。少女漫画家たちがそれぞれの薔薇をシュラバに咲かせていた時代。先生や私たちアシスタントにとっての青春だったんだと思います」

(ライター・矢内裕子)

■東京堂書店の竹田学さんオススメの一冊
『不快な表現をやめさせたい!? こわれゆく「思想の自由市場」』は、自由な批判によってその表現の是非を問うた一冊。東京堂書店の竹田学さんは、同著の魅力を次のように寄せる。

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 著者は左翼的立場とエロマンガなどを愛好するオタクとしての立場から、不快な表現とどう向き合うべきかを検討し「表現の自由」を考察する。題材とするのは、国際芸術祭「あいちトリエンナーレ2019」の企画展「表現の不自由展・その後」が中止された事件と、マンガ『宇崎ちゃんは遊びたい!』のキャラクターを使用した献血ポスターがネット上で炎上した事件だ。

 表現内容を評価するためにも、表現にふれる機会は最大限保障し、たとえ自身にとって政治的・性的に不快だとしても、性急に規制を求めるのではなく、自由な批判によってその表現の是非を問い、対話を重ねて社会を変えていくべきだと著者は主張する。ヘイトスピーチが横行し、表現規制やむなしという動きが強まるなか、個人の尊厳に立脚する「表現の自由」の重要性を再認識させる啓蒙書である。

AERA 2020年5月25日号