福岡伸一「コロナ検査で注目の抗原検査は排卵チェッカーと基本的に同じ原理」 (1/2) 〈AERA〉|AERA dot. (アエラドット)

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福岡伸一「コロナ検査で注目の抗原検査は排卵チェッカーと基本的に同じ原理」

連載「福岡伸一の新・生命探検」

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新型コロナウイルス(c)朝日新聞社

新型コロナウイルス(c)朝日新聞社

福岡伸一(ふくおか・しんいち)/生物学者。青山学院大学教授、米国ロックフェラー大学客員教授 (c)朝日新聞社

福岡伸一(ふくおか・しんいち)/生物学者。青山学院大学教授、米国ロックフェラー大学客員教授 (c)朝日新聞社

 メディアに現れる生物科学用語を生物学者の福岡伸一が毎回一つ取り上げ、その意味や背景を解説していきます。今回は、39県の「緊急事態宣言」解除を発表した14日の首相会見でも触れられていた、新型コロナウイルスの検査でも注目されている「抗原検査」について取り上げます。

【写真】生物学者の福岡伸一さん

*  *  *
 前回のコラムで、抗原検査は妊娠検査薬や排卵チェッカーと同じ原理であることに触れた。

 排卵日をチェックする検査キットは、黄体形成ホルモン(LH)を検出できるように作られている。黄体形成ホルモンはある日、急激に上昇し、その後、急激に減少する。これをLHサージ(サージとは急変化のこと)と呼び、ほぼ24時間以内に女性の卵巣から排卵を誘発される。なので、検査キットで、陽性(LHサージ)が確認された直後にセックスすれば、妊娠の可能性を格段に高めることができる(むろん確実な妊娠のためには精子の元気さも必要)。逆に、LHサージの前後数日のセックスをがまんすれば、避妊することができる(卵子の受精可能期間はわずか1日程度だが精子は数日生き延びる)。

 検査キットには3種類のモノクローナル抗体が仕込まれている。

 モノクローナル抗体は、現代の分子生物学の3大発明(と私が勝手に呼んでいるのだが、あとは、PCRとクリスパー技術)のひとつ。LHはタンパク質であり、その特定の部位に結合する抗体を、培養細胞を使って安定的に工業的生産できるようにしたのがモノクローナル抗体だ。

 キットの先端に検体(排卵チェッカーの場合は尿)をつけると、毛細管現象で尿が吸い上げられ、もしその中にLHが含まれていれば、第一のモノクローナル抗体と結合する。LHとモノクローナル抗体複合体はそのままさらにキットの中を移動し、第二のモノクローナル抗体と出会う。この抗体は尻尾が土台に固定されていて、第一抗体とは違う部位でLHと結合する。なので「土台―第二抗体―LH―第一抗体」という具合に、LHを両側から抗体が挟むサンドイッチ型の複合体ができる。もともと第一抗体の尻尾には色素がつけられているので、もしこの土台の上に複合体が集積すると、赤いラインが表示されることになる。


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