妹尾昌俊さん(40)/学校業務改善アドバイザー、中央教育審議会委員などを歴任。近著に『教師崩壊』(PHP新書)。4児の父 (c)朝日新聞社
妹尾昌俊さん(40)/学校業務改善アドバイザー、中央教育審議会委員などを歴任。近著に『教師崩壊』(PHP新書)。4児の父 (c)朝日新聞社

 新型コロナウイルスの影響で緊急時代宣言が延長された。休校が続く地域も多く、気になるのは子どもたちの「学習の遅れ」だ。今後、どのような対応が必要になるのだろうか。AERA 2020年5月18日号では、教育研究家の妹尾昌俊さん(40)に話を聞いた。

【表】トランプ大統領は2点… コロナ禍と戦う世界のリーダー「通信簿」はこちら!

*  *  *

 休校が長期化し、子どもたちの学びをめぐる問題が山積しています。学習の遅れや地域間格差を心配する声も高まっています。こうしたなか着目すべきは、教師が子どもたちの学習の動機付けや好奇心に火をつける役割を果たせているか、です。

 優れた教材はオンライン、オフライン問わずたくさんあります。子どもたちは学校から課題も出されているでしょう。しかし、問題はそれを「やる子」と「やらない子」がいることです。

 子どもたちは、大きく三つのタイプに分けられます。(1)自分から進んで勉強する子。(2)先生に言われたり、友だちに影響されたりして、多少のプレッシャーがかかるとする子。(3)プレッシャーがかかってもしない子。勉強ができる家庭環境にない場合もあります。

 (1)の子は問題ないでしょう。(3)の家庭環境によって勉強できない子たちについては、休校による学力格差の開きが懸念されており、丁寧な支援が必要です。そして、一番のボリュームゾーンは、(2)の子たちです。学校から課題が出されても、なんのフィードバックもなければ頑張れません。友だちの様子もわからず、孤立しがちです。この子たちをいかにして(1)に引き上げるかも、重要な教育課題です。

 ICTが整備されている環境では、双方向の指導が可能ですが、そうした自治体はわずか5%という調査結果もあります。環境整備は急務ですが、追いつかない現状では、例えば保護者のパソコンやスマホを借りて、朝のホームルームをオンラインで開くだけでも違います。教師は子どもたちの様子を聞いたり、勉強の状況を確認したりできます。子どもたちの孤独も緩和できます。オンラインでつながれない子には、電話などオフラインの方法を組み合わせていく必要があるでしょう。

 4月の新学期開始時に休校に入り、教師と子どもたちの関係構築ができていない学校も少なくないはずです。まずは「つながる」ことです。

 感染が都市部ほど拡大していない地域では、分散登校を前向きに検討すべきでしょう。週に1日、学年ごとに1時間ほどでも登校させ、課題のチェックをしたり、勉強の悩みを聞いたりする。それが、子どもたちにとって“学習のペースメーカー”になります。

次のページ