藤原和博さん(64)/1955年、東京都生まれ。杉並区立和田中学校・奈良市立一条高校元校長。元リクルート社フェロー (c)朝日新聞社
藤原和博さん(64)/1955年、東京都生まれ。杉並区立和田中学校・奈良市立一条高校元校長。元リクルート社フェロー (c)朝日新聞社

 緊急事態宣言が延長され、休校も延長された地域が多い。心配なのは、学習の遅れだ。教師や親、そして子どもたち自身は、今をどう捉え、どう行動すればいいのか。AERA 2020年5月18日号では、教育改革実践家の藤原和博さん(64)に話を聞いた。

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 新型コロナウイルスを一時的なものと捉えていてはダメだと思います。BC(Before Corona)/AC(After Corona)という言葉がありますが、新型コロナは世の中を根底から変えていくでしょう。

 むしろ世の中が一皮むけるための「黒船」だと捉えたほうがいい。この騒動は1年以上続く。そういうつもりで大人も子どもも覚悟したほうが、成長すると思います。

 実は、以前から学校というシステムの支配は弱まっていました。そこに新型コロナが決定打となりました。そう言える理由は二つあります。

 一つは先生側の理由です。学校というと「建物」のことを私たちはイメージしがちですが、先生たちが知識を教えている「場所」です。その先生たちの年齢層にギャップがある。団塊の世代の人たちとその下の50代、60代が非常に多く、30代、40代が極端に少なかった。そのために20代を急増させていますが、ベテランの50代の教員は現場からこの10年でいなくなります。

 二つ目は生徒側の理由です。経済格差が学力差にそのまま表れる現象が顕著になった。勉強ができる子とそうでない子。これを学力のフタコブラクダ化といいますが、その差がどんどん開いています。学校というのは一斉に真ん中の層の子に向けて教えるところですから、これでは今の学校には存在しない層に向けて授業をやっているようなもの。塾に行っている子はもうやっちゃってるからわかっている。わからない子は初めからわからないのです。

 一斉授業の矛盾を革新できない現実、さまざまな学力の子たちに教材を使い分けて教えきれるベテラン教員の不在。それでも先生たちは頑張って現場を支えてきました。しかし新型コロナによって、いよいよごまかしがきかなくなった。

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