丸投げされた家庭側は、どうやって課題をこなしているのだろうか。

 中には、学校のホームページ等で「わからない時は、わかりませんでした」とプリントに書いておけばいいよ……と、現実を見据えた声かけ動画を発信している先生もいるようだが、とくに発信のない学校は、ある程度はなし崩しになってしまうことを前提に課題を出しているところもあるのだろう。何もしないで遊んでいるより、この何割かでも実行できればよし、と。

 課題を受け取った保護者はどうか。

 子どもにすべてをやらせようと躍起になるのがふつうだ。「提出物の内容が成績の評価につながる」となればなおさらだ。

 そこで、課題を1日ごとにファイルに分け、きっちりとスケジュール表を作って子どもにやらせる「すご腕ママ」も続出しているという。

 反抗期前の子なら、その通りにやるかもしれない。しかし果たして、それが親子にとって幸せな学びになるのだろうか。文科省が掲げる「予測不可能な時代に、自ら課題をみつけ、自ら解決する児童生徒」を育てることにつながるのだろうか。

 プリント課題の弊害は、少なければ少ないで親の不安をかきたてる。隣の学校や友達の学校と比較し、「うちの学校はこれで大丈夫だろうか?」と思ってしまう。

 プリントの多い、少ないで一喜一憂していると、「子どもは今いったい何を必要としているのか」の部分が希薄になりがちだ。いうまでもなく、今必要なのは先生や友達との「つながり」だろう。それには、やはり紙ベースだけではなく、オンラインの活用は不可欠になってくる。

 そのような中、5月11日に文部科学省から教育委員会向けの「学校の情報環境整備に関する説明会」が行われた。

「今は前代未聞の非常時・緊急時なのに緊張感がない」
「使えるものは何でも使うべき。家庭のパソコン、家族のスマホ、できることから、できる人から使いましょう。一律にやる必要はない」
「既存のルールにとらわれず、臨機応変にやるべき。セキュリティーを守ることが目的化してはダメ」
「教育委員会の方、現場の管理職の方は頭を180度変えていただきたい」

 など、文部科学省初等中等教育局の高谷浩樹課長からはかなり強い言葉が飛び出した。全国一斉に環境が整うのを待ってはいられない。横並びではなく、できることから始めよう、という強いメッセージだ。国からこのようなメッセ―ジが出ても動きが鈍いのは、自治体の首長や教育長の存在が原因、ということか。

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