4月末にオンライン開催された米国癌学会AACRでは、新型コロナで重症化しやすい患者を調べた最新データが発表された。各国で多少違いはあるが、いくつか共通因子が見られた。

 肺がんやがんの肺転移を伴う/血液の腫瘍/全身状態が悪い/最近、化学療法を受けた/白血球数が減少している

 各国のデータを踏まえ、がん患者のリスクは「ある程度は高いと推察され、注意が必要」と大須賀医師は言う。

「新型コロナの感染リスクと、治療に期待される効果を比べつつ、治療継続か延期かの判断をしていくことになる。決定には患者さんの意思も大事だが、専門家の高度な判断が必要です。『待てない治療』はあるため、遠慮せず、主治医に相談して決めてほしい」

 医療体制が持ちこたえられるのか、先行きが不透明な点もがん患者の悩みの種だ。

 都内在住の女性(46)が大学病院乳がんの告知を受けたのは4月7日のこと。腫瘍の大きさは20センチで乳首にまで達していた。腫瘍が大きく早めの全摘手術が必要で、乳がんの切除手術は4月末なら予約が可能とのことだったが、病院の方針で不急の手術は当面行えなくなり、乳房再建手術がいつ行えるかは見通せなくなった。

「再建は3カ月後か1年後か、『コロナの状況によります』と言われて……。本来、胸がなくなることは、女性にとりセンシティブなこと。それでも医療機関はコロナのことで手いっぱいと思うと、困っていると言いだしにくい雰囲気があります」

 大学病院で指定された手術日が約20日後に迫る中、女性は再建手術も引き受けてくれる治療先を探した。知人のつてを頼り、5月末に都内の別の病院で切除手術と同時に再建手術を行えることになった。(ノンフィクションライター・古川雅子)

AERA 2020年5月18日号より抜粋