私が教えるノースウエスタン大学の学生が、手作りのマスクを寄付していると耳にし、その一人に話を聞いた。

 生理学の博士課程に在籍するアンダキーノさん(29)は、友達からジャノメのミニミシンを借りてマスクを作り始めそうだ。ある日、大手チェーン店で買い物をしているうち、店員にマスクが支給されていないと知り、以来必ず、余分のマスクを持ち歩くようにして、店員らに配っているという。手芸などしたことがないので、1枚を作るのに1時間近くもかかるらしい。

 ワシントン州に住む彼女の姉オーリアさんは、夫が新型コロナで仕事を失ったそうで、マスク作りを商売にし始めた。家の前にスタンドを設け、一般のマスクは1枚8ドル、フィルターを入れるポケット付きマスクは同10ドルで売っているという。これまでに200枚以上作っているという。

 マスク文化の広がりが、アメリカ人の暮らしをわずかながら支えるようにもなり始めている。

◎ケイン岩谷ゆかり/1974年、東京生まれ。ジャーナリスト。父の仕事の関係で3歳の時に渡米。以降、米国と日本での生活を繰り返し、ジョージタウン大学外交学部を卒業。アメリカのニュースマガジン「U.S. News and World Report」を経て、ロイターのワシントン支局、サンフランシスコ支局、シカゴ支局で勤務。通信、ゲーム業界などを担当した後、2006年にウォール・ストリート・ジャーナルへ転職。2008年にサンフランシスコに配属、アップル社担当として活躍。現在はノースウェスターン大学ジャナリズム学部の講師を務めている。

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