ブレイディみかこさん(54)/ライター、コラムニスト。1965年、福岡県生まれ。96年からイギリス在住。著書に『子どもたちの階級闘争』など多数。6月に『ワイルドサイドをほっつき歩け』を刊行予定(撮影/篠塚ようこ)
ブレイディみかこさん(54)/ライター、コラムニスト。1965年、福岡県生まれ。96年からイギリス在住。著書に『子どもたちの階級闘争』など多数。6月に『ワイルドサイドをほっつき歩け』を刊行予定(撮影/篠塚ようこ)

 イギリスでは3月23日からロックダウンを継続中している。AERA 2020年5月4日-11日号では、イギリス在住のライター・ブレイディみかこさんが都市のいまを伝える。

【表】トランプ大統領は2点… コロナ禍と戦う世界のリーダー「通信簿」はこちら!

*  *  *

――ライターのブレイディみかこさんは、イギリスのブライトンに暮らす。日本の外出自粛要請より前の3月23日に、イギリスのロックダウンが始まった。

 イギリスのロックダウンはなんの準備もなく急に始まったわけではありません。給与8割の補償をはじめ、家賃の支払いが滞ったときに、家主による退去要請を6月30日まで禁止する法律もできました。その他にも政府は、即座に住宅ローンの3カ月支払い休止やクレジットカードの返済を無利子で3カ月滞納できるように申請できるといった「ペイメントホリデー」という施策を発表しました。

 ロックダウンに入っても、ある程度の補償があることを明確に国民に伝えてパニックが起きないようにした。不安な人は不安だとは思いますが、補償の中身が二転三転する日本とはちょっと違う気がします。営業停止と労働者の生活の補償はセットにしないと、こっちでは暴動が起きかねないと思います。

――ロックダウンから約1カ月が経過し、イギリスではどのように暮らしているのだろうか。

 企業家や会社の重役などが住んでいる裕福な地域では、もともと在宅中心で働く人が多かった。外出禁止でもエクササイズや犬の散歩は認められていますから、ジョギングやサイクリングをしている人もいて、いつもと変わらない印象です。一方、私の住まいのあるエリアは、私の夫もダンプの運転手ですが、そういった運送業や看護師、介護士、スーパーの店員さんといった「キーワーカー」と呼ばれる人が多く、当然ながらみんな働きに出ています。住むエリアによってコロナ禍にも階級差が出ているのです。

 一方、そんなキーワーカーの人たちに感謝の意を表すために毎週木曜日の夜は、みんな家の前に出て「ありがとう」というエールの拍手を送る風習が定番化しました。

 買い物事情でいえば、医療関係者やお年寄りの人だけが買い物できる時間帯を優先的に設けているスーパーが多いです。だいたいどのスーパーも開店直後の1時間が、そういう時間帯になっています。ロックダウン当初は買いだめが大きな問題になりましたが、いまはそれも落ち着いています。

次のページ