話を甘エビに戻しますが、以前、筆者の知り合いの甘エビフリークの一人が、「一度でいいから、産地に行って新鮮な甘エビを腹いっぱい食べたい」と言っていたことがありました。皆さんの中にもそういった願望をお持ちの方がいるかもしれませんが、もう一度考え直すことをお勧めします。新鮮な甘エビは皆さんが思っているような味ではありませんので。

 甘エビが甘いのは、アミノ酸の一種の「グリシン」という甘み成分のためで、甘エビには白身魚の100倍ものグリシンが含有されています。そして甘エビ独特のあのトロッとした食感がその甘みを引き立てているんです。そのとろみは、甘エビ自身が持つたんぱく分解酵素によって、自身の身が分解されることで生じているんです。従って、捕獲後すぐの新鮮な甘エビは、あの独特のとろみもなく、甘さもそれほど感じられません。一日程度経つことで熟成が進み、あの甘エビ独特のとろみと甘さが醸成されるんです。

 とは言うものの、新鮮な甘エビは、エビ特有のプリプリ感が楽しめますので、プリプリ食感がお好きな方には、新鮮な甘エビも十分美味だと思います。

 くら寿司では、トロっとした触感と絶妙な甘みのマリアージュを楽しめる甘エビのお寿司はもちろん、大阪にある天然魚市場では、新鮮な甘エビも販売しています。機会がありましたら、甘エビの食べ比べというあまり経験できない贅沢にチャレンジしてみてはいかがでしょうか?

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○岡本浩之(おかもと・ひろゆき)

1962年岡山県倉敷市生まれ。大阪大学文学部卒業後、電機メーカー、食品メーカーの広報部長などを経て、2018年12月から「くら寿司株式会社」広報担当、2019年11月から、執行役員 広報宣伝IR本部 本部長

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岡本浩之

岡本浩之

おかもと・ひろゆき/1962年岡山県倉敷市生まれ。大阪大学文学部卒業後、電機メーカー、食品メーカーの広報部長などを経て、2018年12月から「くら寿司株式会社」広報担当、2021年1月から取締役 広報宣伝IR本部 本部長。

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