感謝すべき人は他にもたくさんいます。誰もが一切動かなければこのウイルスを退治できるとしても、自分が動かない代わりに誰かが動いているんです。たとえば荷物を届けてもらうこともそうですし、「もっとマスクを作れ」というのも誰かが作ってくれているんです。ごみの収集にしてもそう。決められた日に決められた所へ置いておけば、いつの間にかなくなっている。実際にそれをやってくれている人への想像力をどんどんなくしていったことが、いま問われている気がします。

 みんな、個人の単位で人が生きているという足元を想像してみたいなって、いま改めて思うんです。そうすると、自分には何ができるだろうかと考えるようになるから。「誰かが決めてくれ」ではなく、自分自身に問えるようになる。

(構成/編集部・藤井直樹)

AERA 2020年5月4日-11日号より抜粋