梅井清香さん(90)/東京五輪聖火ランナー(写真:本人提供)
梅井清香さん(90)/東京五輪聖火ランナー(写真:本人提供)
西川千春さん/笹川スポーツ財団特別研究員(写真:本人提供)
西川千春さん/笹川スポーツ財団特別研究員(写真:本人提供)

 新型コロナウイルスの影響で1年の延期が決まった東京五輪。延期はあらゆるところに影響を及ぼしているが、それでも前を向く人がいる。五輪を心待ちにする人たちの声を掲載した、AERA 2020年5月4日-11日合併号の記事を紹介する。

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●トレーニング重ね1年後に備える
梅井清香さん(90)東京五輪聖火ランナー

 昨年6月に聖火ランナーの公募開始のニュースを見て、近所の加圧トレーニングジムDEUXの伊藤喜剛先生に「90歳になる私も走れるか」と相談しました。「トレーニングをすれば大丈夫」と太鼓判を押してもらい、準備を開始。生活や食事も見直し、特にスケトウダラの速筋たんぱくが筋肉に良いと聞き、ちくわや魚肉ソーセージなどを意識して食べてきました。1年延期になり、正直ほっとしている部分もあるんです。昨年11月に家の中で転倒し圧迫骨折で2カ月入院。要介護4に認定されました。ベッドの上で聖火ランナーの当選の知らせを受けてリハビリし、今では杖もつかずに歩けるまで回復しました。あと1年でしっかり走れるよう取り組みたいです。新型コロナの影響で、私が大女将を務める東京・自由が丘の中華料理店「梅華」も休業し、創業66年で一番の存続の危機です。でも今はみんなで辛抱のとき。細心の注意を払って生き抜き、来年の五輪は聖火ランナーとして参加し、楽しみたいです。

●最前線で闘う人に感謝を伝えたい
西川千春さん 笹川スポーツ財団特別研究員

 イギリスに住んでいた2012年、ロンドン五輪に言語サービスのボランティアとして参加しスポーツボランティアに魅了され、ソチ、リオ両大会にも参加。東京大会はボランティアとして参加予定のほか、組織委員会の検討委員や研修の講師も務めています。1年延期され、参加が難しくなるボランティアもいるでしょう。一方で、この1年はボランティアのスキルアップに取り組む時間にもなります。語学や手話、障害のある方の介助などを学ぶのもいい。この1年があったことで「東京大会のボランティアは素晴らしかった」と世界中の方々に思ってもらえるよう取り組んでいけたらと思っています。ボランティアに参加しているとき、「ありがとう」の一言が大きなエネルギーになります。相手を尊重し、感謝を伝えることはとても大切なことで、いま最前線で闘う医療関係者への偏見が各地で報告されていますが、懸命に社会を支える方々に、もっと感謝や尊敬を伝えていくことが必要ではないかと思います。

(構成/編集部・深澤友紀、ライター・宮本さおり)

AERA 2020年5月4日号-11日号