竜一は、ある意味で想像しやすい人物です。ここまで強烈な作品だと、自分の実生活と切り離して、想像力を飛躍させることができます。誰かの戸籍を奪う経験なんて、現実ではないですからね(笑)。逆にフラットな日常を描いたもののほうが難しいかもしれない。だから、今回はこのドラマの世界に没頭して楽しんで演じようと思っています。それに、映像作品は撮る順番もバラバラですし、プラモデルのパーツみたいなもの。その瞬間、瞬間で集中して演じますが、カットがかかってしまえばもう「普通」。それは昔からそうですね。

 玉木は1月に40歳の誕生日を迎えた。年齢的な節目を意識することはないが、現場で求められる役割には変化を感じるようになったという。

 主演を任されることで責任感は増えます。自分のお芝居だけではなくて、俯瞰で現場を見ていかないといけないとか。でも、僕が気をつけているのは「みんなで楽しく撮影をする」ということくらいなんですが。ふわ~っと現場にいて、誰かが喋ってたら自然と交ざったり。楽しいのが一番大事だと思うんです。本来ならみんなで飲みに行く時間も大事にしています。後輩であってもあまり気を使ってほしくないので、縦の関係性を崩していったりしています。一生さんとは同世代だし共通の友人もいるので、改めて話したいですね。ただ、撮影中にあんまり馴れ合いすぎるのもどうかな、という気持ちもあります。

「人が好き」だと言う。いくつになっても人への好奇心をなくしたくない。

 自粛前は仲間と食事してお酒を飲んで、早く帰ろうと思っていたけど気づいたら朝6時だった、みたいなこともよくありました(笑)。“仲間”はこの業界じゃない人のほうが多いです。趣味で出会った人とか、仕事の「外」で出会った縁も大事にしたいと思っているんです。まったく違う経験をしながら人生を歩んできた人と出会うこと自体が楽しいし、話を聞くとさらに面白い。俳優はあらゆる職種を演じなければいけませんから、そんな出会いが役に立つこともあるかもしれない。いくつになっても守りに入らず、好奇心旺盛な自分を残しておきたいんです。いつも敏感にアンテナを張っていたい。

 常に自分のほうが面白いことをやっているぞ、と思えるような人生の楽しみ方をしたいですね。だから40歳はあくまで通過点。50代、60代になったとき、もっと大きな自分になっていたいんです。

(構成/ライター・大道絵里子)

AERA 2020年5月4日-11日号