福岡伸一「いったんここでコロナの検査技術を整理しよう」

福岡伸一の新・生命探検

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2020/04/30 07:00

 原理はPCRよりも単純で、ウイルスタンパク質を固定した紙の上に血清を垂らす。もし抗体が血清に含まれていれば、ウイルスタンパク質と抗体の複合体ができるので、今度はもうひとつ別の抗体を使ってその複合体を検出する。妊娠検査薬や排卵チェッカーと同じ原理である。

 抗体検査の問題点のひとつは、特異性である。

 タンパク質の検出は、PCRほどは特異的にできないので、他のコロナウイルスに対する抗体を持っている人も陽性と判定してしまう可能性がある。普通のコロナウイルスは昔から存在し、軽い風邪を引き起こしていた。特異性に関しては、モノクローナル抗体を使った方法により、より鋭敏なキットの開発が急がれている。

 しかし、さらに原理的な問題がある。

 抗体を持っているからといって、二度と新型コロナウイルスに感染し、発症しないかどうかわからないということ。それから、ウイルスに感染して免疫をつけた人がみんな、抗体検査で陽性となるかどうかわからないこと、さらに、一度得た免疫がどれくらいの期間、持続するかもわからないこと、などなど新型コロナウイルスに対する免疫反応はまだわからないことだらけである。

 免疫学の一般論からいえば、抗体検査陽性ならかかりにくいはずだとは言えても、それが社会的・経済的パスポートみたいに通用かといえば、今のところむずかしい。また、抗体陽性が、人々の管理や分断の道具に使われるのも好ましくない。かといって、ワクチンや特効薬がまもなくできて、霧が晴れるように問題が解決し、世界が祝祭モードに包まれる、という風な解決も夢でしかない(ワクチンが開発・認可されて普及するには数年以上がかかるだろう)。

 ということで、コロナ問題とは長期的な共存戦略をとるしかない。新しいパラダイムと生命哲学が必要となる。

○福岡伸一(ふくおか・しんいち)/生物学者。青山学院大学教授、米国ロックフェラー大学客員教授。1959年東京都生まれ。京都大学卒。米国ハーバード大学医学部研究員、京都大学助教授を経て現職。著書『生物と無生物のあいだ』はサントリー学芸賞を受賞。『動的平衡』『ナチュラリスト―生命を愛でる人―』『フェルメール 隠された次元』、訳書『ドリトル先生航海記』ほか。

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福岡伸一

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福岡伸一(ふくおか・しんいち)/生物学者。青山学院大学教授、米国ロックフェラー大学客員教授。1959年東京都生まれ。京都大学卒。米国ハーバード大学医学部研究員、京都大学助教授を経て現職。著書『生物と無生物のあいだ』はサントリー学芸賞を受賞。『動的平衡』『ナチュラリスト―生命を愛でる人―』『フェルメール 隠された次元』、訳書『ドリトル先生航海記』ほか。

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