「解熱剤を飲んでも熱が下がらないのに検査に応じてもらえず、不安で仕方ありません」

 こう訴える都内在住の会社員女性(26)が体調不良に気づいたのは4月16日、木曜日の夜。倦怠感があり、熱を測ると37度5分あった。前日に辛くて食べきれなかったユッケジャンスープの残りを食べると、全く味がしなかった。翌日から会社を休み、土曜日に厚労省の相談窓口に電話すると、熱が4日続くようであれば保健所に電話するよう指示された。熱は下がらず、女性は20日に保健所に電話をすると指定病院に連絡するよう指示を受けた。

「もし感染していてその病院に出かけて迷惑をかけてもいけないので、電話で診断してもらいました。先生には『解熱剤を飲んでも熱が下がらなければPCR検査することになると思います』と言われました」

 電話診断を終えた女性の自宅に看護師が訪れ、郵便受けに「カロナール」という解熱剤を入れてくれた。しかし、薬を飲んでも熱は下がらず、病院に連絡したが、医師は咳など肺炎の症状が出ていないことを理由に「まだ検査の対象ではありません」と繰り返したという。

 女性の職場では、4月上旬に同僚が1人、新型コロナに感染していることが判明したが、使用する出入り口が違うなどの理由で濃厚接触者とは認定されていなかった。また、テレワークに対応できる職種ではなかったため、自覚症状が出るまで連日、30分以上電車通勤を続けていた。

「食事をして味がわかる時もありますが、セロリのピクルスを食べて酸味が感じられなかったこともあります。それでも、検査してもらえないんです」

 と訝(いぶか)る女性は、食事や生活必需品は近所に住む母親に差し入れてもらうなどして、全く外出をしていない。朝起きて、平熱近くまで下がっている日もあるが、時間が経つにつれて熱が上がるような状態が続いている。これについて、厚労省技術系OB(医師)はこう語る。

「地方の保健所や衛生研究所では検査技師の複数配置を毎年のように要求していましたが、認められた試しがなく、ルーティンをギリギリこなせるぐらいの体制を強いられてきました。要は財務省に牛耳られてきたわけで、そういう長年のツケが一気に噴出して現場が対応できなくなっているのでしょう。法令系の官僚の発想は『統治』だけで、『国民のために』など聞いたことがない。この期に及んでも霞が関にいると、地方や現場は『外国』なんですよ」

(編集部・大平誠)

AERA 2020年5月4日-11日号より抜粋