一人で聞くよりも二人で聞く方が情報は確かになる。天皇と皇后が横並びで助け合う関係性が、より強まっているのだと思います。天皇と皇后の関係性は、昭和より平成、平成より令和と、対等に近づいていると感じます。

 早速、「女性自身」(4月28日号)が「雅子さま『いまこそコロナ禍に苦しむ国民へ激励を!』」という記事を載せていましたよね。確かに天皇と皇后が一緒にメッセージを出せば強烈なインパクトになり、平成との違いをはっきり示すことになるのではないか。

 あるいは、天皇は危機が深まるにつれ、国民の間にメッセージを求める空気が醸成されるのを待っているのかもしれないと思います。

 11年3月の、東日本大震災直後のメッセージは、当時の天皇の側からの積極的なアプローチだったと思います。16年8月の「退位」メッセージはNHKのスクープから始まり、内閣は蚊帳の外でした。発表翌月には宮内庁長官が交代し、内閣と宮内庁との軋轢(あつれき)が見え隠れしました。

 今の天皇と皇后はそういう経緯を見ているわけで、内閣との関係はより慎重に考えているのではないかと思うのです。

 そもそも空気といっても、世論調査でもしない限り客観的に測れるものではありません。ですが、主権者である国民が天皇にメッセージを求める空気が高まっているという判断のもと、天皇がそうした空気に応えるような形がとれれば、憲法との抵触を避けることができるという説明も可能になってきます。

(構成/コラムニスト・矢部万紀子

AERA 2020年4月27日号より抜粋

著者プロフィールを見る
矢部万紀子

矢部万紀子

矢部万紀子(やべまきこ)/1961年三重県生まれ/横浜育ち。コラムニスト。1983年朝日新聞社に入社、宇都宮支局、学芸部を経て「AERA」、経済部、「週刊朝日」に所属。週刊朝日で担当した松本人志著『遺書』『松本』がミリオンセラーに。「AERA」編集長代理、書籍編集部長をつとめ、2011年退社。同年シニア女性誌「いきいき(現「ハルメク」)」編集長に。2017年に(株)ハルメクを退社、フリーに。著書に『朝ドラには働く女子の本音が詰まってる』『美智子さまという奇跡』『雅子さまの笑顔』。

矢部万紀子の記事一覧はこちら