生徒たちが本当に授業に参加しているかどうか、どのように確認していたのだろうか。

 生徒が指定されたオンラインに接続すると、担当する教師のモニターが反応する。接続していない生徒を見つけると、教師が電話で注意する。電話に出ない生徒がいると、その保護者に連絡するといった具合だ。

 ただ、生徒たちが本当に視聴していたかどうかまで、十分に確認する術はなかった。

 まして、16日から始まった小学校の授業の場合、更に問題は深まる。都さんも小4男児と小2女児の母親だ。「私は教師だから、オンライン授業の問題点も十分理解できたし、子どもたちに事前に練習させることもできた。でも、いくらテレビでEBS放送を視聴する形式にしても、幼い子が長い間、集中力を維持することは難しいだろう。共働き家庭ともなれば、なおさら問題は深刻だ」と語る。

 このため、全国の学院(塾)の一部では、自分たちの教室を開放し、そこでオンライン授業を受けることを勧める業者も出てきた。学院側は衛生管理に気を配るとしているが、世間からは「わざわざ自宅学習にしたのに、本末転倒だ」という声も上がっているという。

 また、オンライン授業では、生徒がどのくらい理解したかを確認できない。スピーディーだが、理解できた子とそうでない子の学力格差が広がりやすい。

 都さんの中学校では、コロナ問題の終息後、オンライン授業の内容について質問する時間を設けることにしている。ただ、コロナ問題が長引けば長引くほど、そのフォローアップが難しくなりそうだ。

 課外授業など集団生活を学ぶ機会がほとんどないのもオンライン授業の難点だ。学校では「コロナ予防の方法」など、社会教育の幅を広げる努力もしているが、教師の間では「SNS空間でのいじめなどが増えるだろう」と噂し合っている。

 それでも、都さんが教える中学校の生徒の出席率は100%だった。都さんは「1カ月以上も新学期が遅れ、生徒たちも授業を待ちわびていた。新しいスタイルへの好奇心もあったようだ」と語る。朝6時からオンラインに接続していた生徒もいたという。(朝日新聞編集委員・牧野愛博)

AERA 2020年4月27日号より抜粋