筆者も、30年ほど前、初めて東京に住んだ時、駅の立ち食い蕎麦屋さんで出された、蕎麦が見えないほど真っ黒な汁にかなり驚いたことがあります。日清食品さんのカップ麺「どん兵衛」が、関東と関西でスープの味を変えているのも有名な話ですよね。

 そして、もちろん当社も、関東(東日本)と関西では、お寿司につけるしょうゆの味を変えています。関東がすっきり、関西はやや甘めにしています。そして実はしょうゆについては、さらに九州でも味を変えているんです。九州のお店のしょうゆは、地元の皆さんの嗜好に合わせて、関西のものよりさらに甘めになっています。

 余談になりますが、当社は、現在アメリカと台湾にそれぞれ約25店舗ずつお店を展開しています。それらのお店のしょうゆはどうなっているでしょうか?

 アメリカのお店では、現地で作られている、関東の味に近いしょうゆを使っています。一方、台湾の方々は甘めの味が好きなので、九州のしょうゆを使っているんです。

 一方で、以前は関東と関西で違っていたものが統一されたものや、一般の家庭では違いがあるものの、当社のお店では統一しているものもあります。

 例えば、玉子焼き。地域差や家庭による違いはあるものの、一般的に関東のかたは砂糖が入っていて甘いものを、関西のかたは甘くないものを好むと言われています。そして現在販売している当社の玉子焼きは、これまでいろいろと試行錯誤してきた結果、関東と関西の間の味に統一しています。

 またいなり寿司については、関東では俵型の油あげが、関西では三角形の油あげが一般的ですが、当社では俵型のものに統一しています(かつては三角形のあげを使用していましたが)。

 外出の自粛が求められている現状では無理ですが、この騒ぎが収まったら、旅行先などでも、現地のくら寿司に寄ってみてください。いつもお越しいただいているお店とは、違う味や違うメニューに出会えることがあるかもしれませんよ。

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○岡本浩之(おかもと・ひろゆき)
1962年岡山県倉敷市生まれ。大阪大学文学部卒業後、電機メーカー、食品メーカーの広報部長などを経て、2018年12月から「くら寿司株式会社」広報担当、2019年11月から、執行役員 広報宣伝IR本部 本部長

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岡本浩之

岡本浩之

おかもと・ひろゆき/1962年岡山県倉敷市生まれ。大阪大学文学部卒業後、電機メーカー、食品メーカーの広報部長などを経て、2018年12月から「くら寿司株式会社」広報担当、2021年1月から取締役 広報宣伝IR本部 本部長。

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