思いを伝え合い今以上の関係を目指す(撮影/片山菜緒子)
思いを伝え合い今以上の関係を目指す(撮影/片山菜緒子)
AERA 2020年4月27日号より
AERA 2020年4月27日号より

 SNSで「コロナ離婚」がトレンドになるなど、在宅勤務や外出自粛をきっかけに夫婦の関係が悪化するケースも出てきている。AERA2020年4月27日号では、夫婦の溝を埋めるコツを専門家に聞いた。

【アンケート結果】悲痛な叫び 誰もが不安を抱えている

*  *  *

「ひどい事件……」

 4月上旬、大学の通信講座に通う女性(41)がテレビを見ていると、新型コロナの影響で収入が減ったことで口論になり、夫が妻を殴って死亡させた事件が報じられた。近くにいた夫(42)は、顔をこわばらせている。

 実は10年ほど前、女性も夫に「こんなに残業しているのに、どうしてお給料が少ないの」と言ってしまったことがある。そのとき夫は黙って部屋にこもり、それから1週間、目も合わせようとしなかった。

「お互い、そのときを思い出したんだと思います。事件の夫婦が実際どうだったかはわかりませんし暴力は論外ですが、余裕がなくなると、いつもならワンクッション置くところができなくなったり、聞くほうも意図を汲み取れなくなってしまいます」

 女性も最近、在宅勤務中の夫にイライラすることが増えた。自分は帰ったらすぐに手を洗うが、夫は先に着替えをし、ひと息ついてからやっと手を洗う。7日に緊急事態宣言が出たときに夫が「県内の移動はいいのかな。車で山に行くのは大丈夫かな」と言っているのを聞き、「そういう問題なのか?」とまたイラッときた。

 医療従事者の苦労に比べたら、自分の悩みなど大したことではないと思う。だが外出が難しくなり、ちょっとした愚痴を話す相手がいないのがつらい。友人に連絡すれば聞いてくれるかもしれないが、こんな緊急時につまらない悩みをと思い、躊躇してしまう。最近は眠りが浅くなり、朝も起きられない。家事がはかどらず、いつまでやっても終わらない。

 3月中旬ごろ、SNSでは「コロナ離婚」がトレンドワードになった。在宅勤務や外出自粛によって閉じられた空間で過ごす時間が長くなり、ストレスが増した。夫婦関係にも軋轢が生まれつつある。

著者プロフィールを見る
川口穣

川口穣

ノンフィクションライター、AERA記者。著書『防災アプリ特務機関NERV 最強の災害情報インフラをつくったホワイトハッカーの10年』(平凡社)で第21回新潮ドキュメント賞候補。宮城県石巻市の災害公営住宅向け無料情報紙「石巻復興きずな新聞」副編集長も務める。

川口穣の記事一覧はこちら
次のページ