作られた当時からこの日が来るのがわかっていたかのように、違和感なく現代美術と共鳴し合う古典の名品たち。前出の古典のエキスパート、「國華」の小林さんもこう話す。

「日本は古くから洪水や地震などの災害が多い。そうした苦難を乗り越えた人たちは、自分にとって一番大切なもの、尊いものを手にして逃げたはず。古美術は自然に残ったのではなく、そうやって選別されて残ったもの。だから、古典は美しいものが多いのです」

 今は古美術と呼ばれても、当時は最先端のアートだった。

「そんな古典の力が、さまざまな形で現代の作家たちに刺激を与えている。観客も古典と現代をつなぐ懸け橋に身を置くことで、新しいものと古いものがどうやって火花を散らしているか、それぞれ違った受け止め方をしてほしい。“鑑賞”するのではなく、“体験”してほしい展覧会です」

 展覧会を企画した、国立新美術館学芸課長の長屋光枝さんは、観客に向けたこんなメッセージをくれた。

「私たちは、ものを歴史的に見ることに慣れていますが、今回は今の自分から見て楽しんでもらいたい。過去のものは、過去にだけ存在するのではなく、今の時代にも引き継がれた私たちのものでもあるんです」

(ライター・福光恵)

AERA 2020年4月20日号より抜粋