漫画家 しりあがり寿さん(62)/「アニメ作品で一番気に入っているのは、狭い狭い4畳半から天地を創造した北斎が、最後にまた夢から戻るところ。クレジットが出たあとも、最後までチェックしてください」(撮影/片山菜緒子)
漫画家 しりあがり寿さん(62)/「アニメ作品で一番気に入っているのは、狭い狭い4畳半から天地を創造した北斎が、最後にまた夢から戻るところ。クレジットが出たあとも、最後までチェックしてください」(撮影/片山菜緒子)

 刀剣、仏像、浮世絵など古典美術と現代アートがコラボレーションした展覧会「古典×現代2020」(新型コロナウイルスの感染防止のため開幕時期は未定)。AERA2020年4月20日号から。

【「古典×現代2020」の作品の一部をフォトギャラリーで紹介】

*  *  *

 仏像とコラボレーションした展示に続くのは、北斎葛飾としりあがり寿さん(62)がまるで「共同作業」を行ったような、打って変わって楽しい展示室だ。

 しりあがりさんは、17年に「ちょっと可笑しなほぼ三十六景」(全46枚)という、北斎の「冨嶽三十六景」のパロディー作品を発表している。今回はその「ちょっと可笑しな……」と、本物の三十六景(全46枚)を並べて紹介する。

 例えば、北斎の「神奈川沖浪裏」の隣に、波が太陽フレアに変わり、波越しに見える富士山が青い地球に差し替わった「ちょっと可笑しな……」バージョンの作品が並ぶ。名作とパロディーが夢の共演を果たしているのだ。

 しりあがりさんは、この展覧会のために壁一杯に展開する新作アニメーションも制作した。

「北斎は90歳まで描いていました。役者絵やら、風景やら、人々の暮らしやら、いろいろな題材をそれこそ死ぬまで描き続けた。そこまで絵を描いたのはすごいな、という尊敬の念をアニメで表現しました。狭い4畳半から壮大な世界を作り上げていくという……うーん、自分の作品としては、わかりやすすぎるかなあ。『これ何?』っていうのが好みなのに、しまった!(笑)」

 しりあがりさんと古典とのおそらく最初のつながりは、仏像だ。洗礼は、小学校の修学旅行で行った京都の寺だった。

「何が好きって、ありがたい仏像が古くなってひっそり立っているのが好き。それもあって、漫画を描き始めたとき、古いものに別の見方を求めるような、パロディーの題材を求めたのかもしれない。まあ、権利関係が面倒でないというメリットもあったけど(笑)」

 なるほど。しりあがりさんの出世作「真夜中の弥次さん喜多さん」も、題材は古典といえば古典だ。

次のページ