いわた・けんたろう/1971年生まれ。医師。神戸大学病院感染症内科教授。うちだ・たつる/1950年生まれ。思想家、武道家。神戸女学院大学名誉教授。(写真/楠本涼)
いわた・けんたろう/1971年生まれ。医師。神戸大学病院感染症内科教授。
うちだ・たつる/1950年生まれ。思想家、武道家。神戸女学院大学名誉教授。(写真/楠本涼)
岩田健太郎氏(写真右)と内田樹氏は、同じ兵庫・神戸を中心に活動する旧知の仲。対談は、内田氏が師範を務める合気道道場「凱風館」で開かれ、150分間語り合った(撮影/楠本涼)
岩田健太郎氏(写真右)と内田樹氏は、同じ兵庫・神戸を中心に活動する旧知の仲。対談は、内田氏が師範を務める合気道道場「凱風館」で開かれ、150分間語り合った(撮影/楠本涼)

 クルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス号」に乗船しその内情を伝え、大きな反響を呼んだ神戸大学病院感染症内科の岩田健太郎教授。本誌コラムニストの思想家・内田樹氏と、クルーズ船の実態をはじめ政府の対応について、週刊誌AERAで対談した(対談日は4月3日)。その中から、ここではクルーズ船対応がなぜ失敗だったのかをあらためて語る。

【岩田健太郎教授と内田樹氏の写真はこちら】

【岩田健太郎×内田樹 日本のコロナ対応の遅さは「“最悪の事態”想定しないから」】よりつづく

*  *  *

──緊急事態宣言を受けて、岩田健太郎医師はツイッターで、<(前略)万が一結果が得られなくてもそれはそれで大きな前進です。うまくいかない事例と真正面から向き合ってこそ「ベターなプランB」は生まれうる>と評した。ようやく、動き始めた。

内田樹(以下、内田):この間の政府の動きで、「ここが分岐点だった」と思うことはありますか?

岩田健太郎(以下、岩田):日本は概ね、いまのところうまくいっていると思います。

内田:そうですか。意外ですね。

岩田:その理由の半分は、コロナが上陸した後の対応が適切だったこと、あと半分はラッキーだったからです。他国に比べて感染者が少ない原因について、日本人が清潔好きだからとかハグやキスをしないからとか言われていますが、僕個人は一番の理由として、国内のコロナ上陸にいち早く気づいたことがあると考えています。

内田:他の国より早く気づいたんですか?

岩田:イタリアやアメリカは、すでに昨年12月の段階でコロナの感染が始まっていた可能性があります。中国人観光客の入国をまったく規制していなかったので、気づいた時点では制御できない数の感染者が国内に発生していたんです。日本ではたまたま、1月に北海道を旅行していた中国人観光客がコロナに感染しているのが発見され、春節の時期に来日する中国人を抑制できたのが大きいと思います。

内田:しかし、横浜に停泊した「ダイヤモンド・プリンセス号」(以下、DP号)では、数百人の感染者が出ましたね。僕はあれは大失敗だったと思います。岩田先生は乗船されて、現場を見て、どう感じましたか?

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