学校現場に混乱をもたらしたが、とりわけ小さな子どもがいる家庭にとっては死活問題だった。「子どもの世話を誰がすればいいのか」「仕事を休んで自分たちが世話すれば、賃金が手に入らない」。教育を受ける権利についての議論が低調だったのは残念だが、全国からこんな悲鳴が一斉に上がった。

 厚労省はまず休校が始まった3月2日、仕事を休んだ従業員に給料を全額支払う企業を対象に、1人当たり日額上限8330円の助成金を出す新たな制度を発表した。

 ここでは対象外だったフリーランスや自営業者向けの支援金が決まったのは、3月10日だった。政府の緊急対応策の「第2弾」に盛り込まれ、業務委託契約などを結んでいる場合に、1日当たり一律4100円を給付することが公表された。

 その支給要領に「不支給要件」として最初に挙がっていたのが「風俗営業等関係者」だった。続いて「暴力団員」や「破壊活動防止法の暴力主義的破壊活動を行った又は行う恐れがある団体等に属している者」もリストアップされている。

 加藤厚労相に見直しを求める要望書を出していたセックスワーカーらの支援団体「SWASH」の要友紀子代表(43)はこう話す。

「4月2日に要望を出して、3日に加藤大臣は、見直さないとはっきり言いました。差別だと指摘されても、なお差別に向き合う気持ちがなかったのは明らかです。官房長官のひと言で態度を変えるのではなく、本来なら最初から差別について考えてもらったうえで、仕組みを考え直してほしかったです」

 要さんは、この制度ができたときから性産業の労働者が「対象外」になっているのではないか、と考えていた。

「有事のときは常にマイノリティーへの差別が出てきます」

 厚労省のウェブサイトで調べると、案の定の内容だった。それでも、要さんのもとに寄せられていた当事者たちの反応は、割れていたという。

「差別の内面化の度合いが当事者によって違うからだと思います。『そうなるだろうね』と受け止める人もいれば、『ここまでひどい扱いを受けることへの危うさを感じた』と言う人もいました」

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