又吉:「食うんかい!」って(笑)。僕も若いころは永田みたいに周りの人間に感情的になる瞬間がけっこうあった。でも自分から謝ったり反省したりがほとんどできないんですよ。

山崎:僕は時間がたつと割と潔く謝るほうかもしれない。「あのときはごめんな」みたいな。

又吉:えらいなあ。沙希もそうだけど健全な子って、デート中に何かトラブルがあっても「あれはあれで、おもしろかったね」みたいに解釈して楽しもうとするじゃないですか。でも僕は1週間くらいそのトラブルを引きずって自分の世界に閉じこもってしまう。無茶苦茶めんどくさいヤツなんです。

山崎:でも僕、永田が原付で走ってて道で待ってる沙希をわざと無視しちゃうシーン、すごく気持ちがわかりました。

又吉:僕も山崎さんが演じる永田を見て「あ、こういうことやったんや」という気づきがありました。例えば沙希と口論になった永田が、隣から「うるさい」と壁をドン、とたたかれてキレるシーン。あのとき沙希に「ごまかさないで」って言われるでしょう。あれを見ながら「バレてるやん」と思った。それまでも沙希には永田の浅い部分とか、いろんなことがバレていたんやろうな、それを見逃してくれてたんだ、と。

(フリーランス記者・中村千晶)

AERA 2020年4月13日号より抜粋