三谷:香取さんは僕がこういうことをやってほしいとお願いした時に、「それはどういうことですか」とか「なぜそれをやらなきゃいけないんですか」みたいなプロセスが一切ない。今回も僕が現場でセリフを足したり、削ったりすることもあるんですけど、瞬時に理解してくれる。僕にとってすごくやりやすい俳優さんですね。

香取:わかっちゃいますね。ほとんど台本読んでいないですけど(笑)。

 三谷脚本ならではのウィットに富んだ会話劇が楽しめるのはもちろんだが、香取さんのコミカルな動きだけで大笑いしてしまう場面が何度もあった。三谷さんは香取さんの魅力について、こうも付け加えた。

「『HR』は総当たり戦みたいな感じで十何人いる中でやってましたけど、香取さんはたった一人であれだけお客さんを沸かせるというのも本当にコメディアンとしてすごい。喜劇俳優として日本を代表する一人だな、と。三木のり平さん以来の逸材だなと僕は思っております」

 取材後は、観客を入れて本番が始まった。

「お客さんを入れると雰囲気が変わる。リハが100としたら250くらいの面白さにはなります」(三谷さん)

 その発言通り、スタジオは揺れるような笑いに包まれた。

 香取さんは初回の収録後、こうコメントしている。

「『どこから見ても、どこを見ても面白い、それがシットコムだ』と、三谷さんが教えてくださったとおりの作品になっていると思います。配信なので、誰もが観たい時に観られる。ぜひ皆さんに繰り返し何度でも見ていただき、笑顔になっていただけたら僕もうれしいです」

(ライター・大道絵里子)

●香取慎吾さんが出演した主な三谷作品

1999年 ドラマ「古畑任三郎 VS SMAP」(脚本:三谷幸喜)に出演
2000年 ドラマ「合い言葉は勇気」(脚本・三谷幸喜)に出演
2002~03年 学園ドラマ「HR」(脚本・総合演出:三谷幸喜)に主演。HRはホームルームの略
2004年 NHK大河ドラマ「新選組!」(脚本:三谷幸喜)に主演。幕末から明治への転換期を生きる若者を描いた青春群像劇で、主人公の近藤勇を演じた
2006年 映画「THE 有頂天ホテル」(監督・脚本:三谷幸喜)に出演。大晦日の高級ホテルを舞台にした群像劇で、ホテルのベルボーイを演じた
2008年 映画「ザ・マジックアワー」に出演
2009年 ニューヨークのオフブロードウェーで舞台「TALK LIKE SINGING」(作・演出:三谷幸喜)に主演。日本未発表の新作をオフブロードウェーで初演するのは異例の試み。10年には日本公演が行われた
2015年 映画「ギャラクシー街道」(監督・脚本:三谷幸喜)に主演。宇宙の片隅で宇宙人相手のハンバーガー店を営む地味な主人公を演じた/舞台「burst!」(作・演出:三谷幸喜)に草なぎ剛さんとW主演。「この二人にしか出来ない二人芝居を」と、三谷さんが書き下ろした
2018~19年 舞台「日本の歴史」(作・演出:三谷幸喜)に出演。卑弥呼から現代まで日本の歴史を描くミュージカルで、さまざまな役柄を演じた

AERA 2020年4月13日号より抜粋