自己否定の悪循環から西原さんを救い出したのは、40歳の時、ADHDと診断されたことだ。

「長年、女性なのに主婦なのに、母親なのに片付けられないのは自分がダメなんだと思っていたけど、脳に原因があったと言われて、なんだ私の努力不足じゃなかったんだって。正直、ほっとしました」

 近隣のADHDの当事者が集まる会に参加し、同じ悩みを持つ仲間に出会ったことも大きかった。ADHDに特化した認知行動療法(自分の考え方のクセを把握し、行動パターンを変えていく心理療法)を受け、毎日少しずつ片付けにトライした。仲間と励ましあい、毎日、できた自分をほめることを繰り返して、自尊感情を取り戻した。

 そこから「エネルギッシュで行動力がある」ADHDのプラスの側面を発揮し、整理収納アドバイザー1級を取得。今では多くのADHD当事者から指名を受けている。西原さんは言う。

「診断を受けていない人、診断が確定されなかったグレーゾーンの人も含めて、かつての私と同じように苦しんでいる人がこんなにもいたのかと驚きます。『初めてつらさをわかってくれた』と泣く人も多いです」

 障害の特性そのものより、困っていることを誰にも言えないことが一番つらい──。親として頑張り続ける当事者たちの訴えは、それをできなくしている社会のあり方を問うている。(編集部・石臥薫子)

AERA 2020年4月13日号より抜粋