開発資金をクラウドファンディングで募るベンチャー企業は多い。ビズジーンは2月末からの1カ月あまりで当初目標の5倍近い1500万円ほどを集めた(写真:ビズジーン提供)
開発資金をクラウドファンディングで募るベンチャー企業は多い。ビズジーンは2月末からの1カ月あまりで当初目標の5倍近い1500万円ほどを集めた(写真:ビズジーン提供)

 新型コロナウイルス対策として、ベンチャー企業が画期的な開発に挑んでいる。負担の少ない簡易検査や環境中のウイルス可視化を目指すという。AERA2020年4月13日号から。

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 大阪大学発のベンチャー、ビズジーンは、新型コロナウイルスの簡易検査キット開発を急ぐ。鼻やのどから採取した検体を垂らせば15分ほどで陽性か陰性かの判定ができるもので、実用化されれば地域のクリニックでも検査が可能になる。代表取締役の開發(かいはつ)邦宏さんはこう話す。

「感染者を早めに見つけるためにも、新型コロナウイルス感染症なのか、ただの風邪なのかのスクリーニングはクリニックで行えるのが望ましい。特別な設備と技術がなくてもできる簡易検査法の確立は重要です」

 同社は特定のウイルスの遺伝子配列を正確に見つけ、検出する特許技術を持つ。これまでもデング熱ウイルスの検査などに活用してきたが、流行を受け、新型コロナウイルスの検査キット開発に乗り出した。

 新型コロナウイルスの検査法は各国で開発競争が行われている。主流であるPCR法(ウイルス遺伝子を増幅、機械でグラフ化して判定する)では、機械を大幅に小型化した検査システムが米国で認可された。専用の機械を必要としない簡易キットも各国で開発され、一部はすでに実用化されている。

 しかし、現行の簡易キットのほとんどは血液を採取し、抗体反応を調べるもの。感染してから抗体ができるまでに時間差があり、発症直後は検出できない。

 ビズジーンのキットは唾液や鼻粘膜に含まれるウイルスの遺伝子を捕捉するため、発症直後でも検査できるほか、血液を採取する負担もない。

 試作品はすでに完成している。実用化テストのためにはウイルスが必要で障壁になることが多いが、国立感染症研究所を通じて現物を入手している大阪大学微生物病研究所の協力を得た。4月半ばをめどにキットの感度評価に入る予定だ。3カ月程度でラボでの開発を終え、患者の検体を用いた治験に入りたいという。

「簡易検査だけで確定診断できなくても、PCR検査の前捌きとしての重要性は非常に高いと考えています」(開發代表)

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川口穣

川口穣

ノンフィクションライター、AERA記者。著書『防災アプリ特務機関NERV 最強の災害情報インフラをつくったホワイトハッカーの10年』(平凡社)で第21回新潮ドキュメント賞候補。宮城県石巻市の災害公営住宅向け無料情報紙「石巻復興きずな新聞」副編集長も務める。

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