首都圏の知事と政令市の市長による9都県市首脳会議では休校延長などについて話し合われた/4月1日、東京都庁 (c)朝日新聞社
首都圏の知事と政令市の市長による9都県市首脳会議では休校延長などについて話し合われた/4月1日、東京都庁 (c)朝日新聞社

 全国の子どもたちに大きな影響を与えている「一斉休校」。学校の再開時期について国は、 感染状況によるとして、判断を自治体に任せた。自治体も判断しかねており、現場は混乱している。安易な再開によって学校が新たな感染源になりかねない。AERA2020年4月13日号から。

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「蔓延の恐れが高いが、学校再開は問題ない」

 菅義偉官房長官が3月26日の会見で学校再開について語った、矛盾に満ちたこの言葉に首を傾げた人も多いだろう。

 政府は、23日に萩生田光一文部科学相が「原則、すべての学校で新学期から再開させる方針」と発言するなど、新学期から再開の立場できたが、感染拡大が進んだ4月1日、政府の専門家会議で「感染が拡大している地域では、臨時休校を継続することも選択肢の一つ」という提言を受け、「一斉」再開ではなく、各自治体の判断とした。

 東京の都立校や大阪の府立校は5月6日の連休最終日まで休校、福岡市は市立の小中学校や高校などで再開を2週間延期した。一方で、予定通り新学期から再開する自治体もある。

「学校の再開は子どもにとってはとても重要。でもそれが『今なのか』は、感染リスクを考えると悩ましい」

 こう話すのは、日本福祉大学教授の野尻紀恵さんだ。一日の半分を学校で過ごす子どもにとって、学校は勉強の場だけでなく、「生活の場」だ。

「子どもから学校を奪うことは、生活も同時に奪ってしまうことになる。だからといって現状では、安易に再開させられない」

 文科省は再開にあたってのガイドラインで、「換気の悪い密閉空間」「多くの人が密集」「近距離での会話や発声」を徹底的に避けるようにとするが、野尻さんはこう危惧する。

「再開する場合でも、先生方が、感染症の専門家からリスクを高めないためのレクチャーをきちんと受けられるわけではないでしょう。学校現場に任されたまま、『距離を空けなさい』『窓を開けなさい』だけで再開するのは本当に危険です」

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小長光哲郎

小長光哲郎

ライター/AERA編集部 1966年、福岡県北九州市生まれ。月刊誌などの編集者を経て、2019年よりAERA編集部

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