ポートマンが演じたのは、物語の後半部、大人になったセレステ。スターとして十分な人気を得ていたものの、精神的に不安定な彼女は業界から干されていた。その再起をかけたライブの直前、彼女の代表曲のミュージックビデオで使われていたマスクをつけたテロリストが、銃乱射事件を起こす。「注目を集めようとすることが生んだ悲劇の連鎖よ」とポートマン。

「大人になったセレステはキャリアを悔いてはいないものの、事件のことを掘り起こされることにはもうウンザリしてる。でも、彼女がその地位にいるのは、事件があったから。だから、彼女はポップスターという鎧を着てステージに立つしかない。しかも、私のように俳優なら、役を演じているときは別人としてカメラの前にいられるけど、アーティストは自分の延長線上でステージに立たないといけないからね。彼女の心的外傷は一生癒えることがないの」

◎「ポップスター」
銃乱射事件のサバイバーの心的外傷と、ソーシャルメディアの抱える問題を描く人間ドラマ。4月3日公開

■もう1本おすすめDVD「抱きたいカンケイ」

 ナタリー・ポートマンは、2008年のオムニバス「ニューヨーク、アイラブユー」で監督を務めたほか、プロデューサーとしても活躍している。11年の主演作「抱きたいカンケイ」も、プロデューサーを兼務した一作。タイトルからも分かる通り、ハリウッドの正統派ラブコメディーだ。

 原題の「No Strings Attached」は、デートマッチングアプリでは「NSA」と略されるおなじみの表現で、「面倒抜きの割り切った関係」=セックスフレンドのこと。彼女が演じるのは、アシュトン・カッチャーが演じる昔なじみの男性とのNSAを提案する主人公の女性。からだだけの関係を求めるのが女性側から、という設定が、公開当時は斬新だった

 ポートマンは、女性の人権活動の賛同者としても名高い。今年の米アカデミー賞授賞式では、功績を過小評価されている女性監督たちの名前を刺繍したケープを着用したことで話題となったばかり。そんな彼女が、初めてラブコメに挑み、主演&プロデュースしたのが「抱きたいカンケイ」。そう考えると、一見幅広く見える仕事の振り幅にも、彼女が発するメッセージの一貫性が見いだせる。

◎「抱きたいカンケイ」
発売元:NBCユニバーサル・エンターテイメント
価格1429円+税/DVD発売中

(映画ライター・よしひろまさみち)

AERA 2020年4月6日号