その投資信託を長期間にわたって積み立てで買うことが、リスク回避につながる。

「もし、株や債券といった金融商品をある時点で全財産を投じて買ってしまうと、その後、価格の上昇が続けば利益が出ますが、価格の下落が続くと損失が拡大してしまいます。

 それに対して、複数回に小分けして投資した場合、投資する時期を分散することで価格変動のリスクをある程度は軽減できます」
 
 酒井さんは、120万円の資産を一度に投資した場合と、その120万円を毎月1万円ずつ10年間、積み立て投資をしたときの運用成果について比較してくれた。

「もし『1万円だった金融商品の価格が7年目に2000円まで下がり、その後は上昇したものの、10年経っても半額の5000円までしか戻らなかった』としましょう。120万円を一気に投資した場合は60万円の損失です。

 一方、毎月1万円ずつ10年間、積み立て投資をした場合は、価格が下落して安くなっているときも1万円ずつ投資し続けているので平均購入単価が5000円以下になり、120万円が139万円まで増えています。

 価格が1万円から2000円まで下がったのに元の1万円に戻った場合、一括投資をしていたら元手の120万円のまま。積み立て投資をしていたら2倍以上の241万円です」
 
 価格が変動する商品に、同じ金額で積み立て投資をすると、価格が高いときには少ししか買えないが、安くなったときにはたくさん買うことができる。

■高い値段で買わないために

「たとえば、リンゴの値段が100円のとき、1万円で買えるリンゴは100個です。しかし、リンゴの値段が半分の50円まで下がると、200個買えます。

 このように価格変動にかかわらず一定の金額で買い続けると、高い価格で買うリスクを減らせるんです。この投資の仕方を『ドルコスト平均法』と呼びます」
 
 投資信託の積み立ては、国や企業、時間、価格と、あらゆる面でリスクが分散できるので、長期的には収益が上がりやすい仕組みになっているというわけ。

 同じ投資信託でも、より幅広く投資対象を分散させたものなら値動きも安定しやすく、さらにリスクを減らせる。(取材・文/木村慎一郎、伊藤忍)

※アエラ増刊『AERA Money 今さら聞けない 貯金の基本』の記事に加筆・再構成