赤木さん夫妻は、お互いを「くん」付けで呼ぶ仲の良さだった。安倍首相と麻生財務大臣に対し、妻は「この2人は調査される側で、再調査しないと発言する立場ではないと思います」とコメントを出した(撮影/編集部・小柳暁子)
赤木さん夫妻は、お互いを「くん」付けで呼ぶ仲の良さだった。安倍首相と麻生財務大臣に対し、妻は「この2人は調査される側で、再調査しないと発言する立場ではないと思います」とコメントを出した(撮影/編集部・小柳暁子)
森友問題と赤木さんの関わり(AERA 2020年4月6日号より)
森友問題と赤木さんの関わり(AERA 2020年4月6日号より)
ライフパートナー法律事務所 生越照幸弁護士(49)/自死遺族支援弁護団事務局長、厚生労働省自殺総合対策の推進に関する有識者会議委員。編著に『自殺問題と法的支援』。松丸正弁護士とともに本件の原告代理人を務める(撮影/編集部・小柳暁子)
ライフパートナー法律事務所 生越照幸弁護士(49)/自死遺族支援弁護団事務局長、厚生労働省自殺総合対策の推進に関する有識者会議委員。編著に『自殺問題と法的支援』。松丸正弁護士とともに本件の原告代理人を務める(撮影/編集部・小柳暁子)

 公文書改ざんを強要され自死した赤木俊夫さん。この事件の真相を求め提訴した妻の代理人が提訴への思いを語った。AERA2020年4月6日号は、代理人の弁護士に独占インタビュー。

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 多くの記者が詰めかけた記者会見。原告代理人の弁護士二人の前には、財務省近畿財務局管財部の職員だった赤木俊夫さん(当時54)の生前の愛読書が並んでいた。白川静『常用字解』、坂本龍一『音楽は自由にする』、『Yellow Magic Orchestra×SUKITA』、日垣隆『折れそうな心の鍛え方』の4冊。書道を嗜(たしな)み音楽を愛し、社交的で人と争うことはない誠実な努力家だったという赤木さんの人柄が伝わってきた。

 3月18日、赤木さんの妻が、国と佐川宣寿元財務省理財局長を相手取り総額約1億1千万円の損害賠償を求めて大阪地裁に提訴した。

 森友学園問題に関する財務省の公文書改ざん問題で、改ざんを指示され、抵抗したものの従わざるを得なかった赤木さんが自ら命を絶ったのは2018年3月7日。いまなぜ提訴に至ったのか。代理人の一人、生越(おごし)照幸弁護士(49)はこう語る。

「夫の死の原因と経緯を、任意でも、情報公開請求しても教えてもらえない。残された道は訴訟しかないと、やむなく訴訟に至ったという経緯です」

 赤木さんの死から2年、この間原告の赤木さんの妻は「体の半分がもぎ取られた」ような苦しみの中にありながら、夫の死の真相を知りたいと思い、佐川元理財局長に説明と謝罪を求める手紙を弁護士を通じて2回送ったが、説明はなかった。麻生太郎財務大臣や佐川元理財局長に墓参に来てほしいという希望を持っていたが、麻生大臣は遺族が来てほしくないと言っているから行っていないと国会で答弁し、そのことにも精神的苦痛を受けた。

 夫の死の真相を知りたいと思った赤木さんの妻は、保有個人情報開示請求をしたが、70ページにも及ぶ開示資料は大部分が黒塗りにされていた。生越弁護士は言う。

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