3月22日、「K-1 WORLD GP」の会場となったさいたまスーパーアリーナの入場口付近には、感染症対策を呼びかけるメッセージも掲げられていた (c)朝日新聞社
3月22日、「K-1 WORLD GP」の会場となったさいたまスーパーアリーナの入場口付近には、感染症対策を呼びかけるメッセージも掲げられていた (c)朝日新聞社
「病院数」のデータはイギリスが2018年、米国は16年、それ以外の国は17年。「病床数」は米国が16年、それ以外の国は17年。データはニッセイ基礎研究所提供
「病院数」のデータはイギリスが2018年、米国は16年、それ以外の国は17年。「病床数」は米国が16年、それ以外の国は17年。データはニッセイ基礎研究所提供

 新型コロナウイルスが猛威を振るい続けるイタリア。感染拡大の背景には、高齢化をはじめ病床数の削減や医療費の抑制などがある。AERA2020年4月6日号では、医療の国際比較しながら日本が優位な点と見習うべき点を探る。

【グラフ】日本は欧米と比べると病院数や病床数は多い?少ない?

【イタリア医療崩壊「見捨てられる患者」も 日本も他人事ではない病院の機能不全リスク】より続く

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 日本とイタリアの共通点は高齢化だ。イタリアは全人口に占める65歳以上の比率が23%に上る。イタリアの高等衛生研究所によると、新型コロナに感染した死者の平均年齢は80歳。欧州連合(EU)で最も進んだ高齢化も死者数を引き上げた一因と指摘されている。

 2017年のOECD(経済協力開発機構)のデータによると、欧州の主要5カ国では女性はスペイン、フランス、イタリアの順、男性はイタリア、スペイン、フランスの順で平均寿命が長い。こうした点を挙げ、「今回の感染拡大地域では高齢化が進行していることがうかがえる」と指摘するのはニッセイ基礎研究所の篠原拓也主席研究員だ。医療の国際比較に詳しい篠原さんは、日本には優位な医療資源があるとも指摘する。日本は欧米先進国と比較して病院数と病床数が突出して多いのだ。

■日本で「崩壊」を防ぐカギ

 人口100万人あたりの病院数(イギリスは18年、アメリカは16年、それ以外の国は17年のデータ)は、ドイツ37.3、フランス45.6、イギリス28.8、イタリア17.6、スペイン16.7、アメリカ17.1に対し、日本は66.4と他国を圧倒。人口千人あたりの病床数(17年、アメリカのみ16年のデータ)もドイツ8.0、フランス6.0、イギリス2.5、イタリア3.2、スペイン3.0、アメリカ2.8に対し、日本は13.1と突出している。

「多くの先進国では病床数を削減し、医療費の抑制を図ってきました。一方、日本は医療費の抑制を図りながらも、高齢化に備え、医療施設の整備や充実を進めてきました。病床数の多寡は、感染拡大に際して患者を受け入れる余力の有無につながると考えられます」(篠原さん)

 医療機関どうしの連携や役割分担が、日本で医療崩壊を防ぐカギになる可能性もある。かろうじて爆発的な感染者増加に至っていない今のうちにできることはないのか。

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渡辺豪

渡辺豪

ニュース週刊誌『AERA』記者。毎日新聞、沖縄タイムス記者を経てフリー。著書に『「アメとムチ」の構図~普天間移設の内幕~』(第14回平和・協同ジャーナリスト基金奨励賞)、『波よ鎮まれ~尖閣への視座~』(第13回石橋湛山記念早稲田ジャーナリズム大賞)など。毎日新聞で「沖縄論壇時評」を連載中(2017年~)。沖縄論考サイトOKIRON/オキロンのコア・エディター。沖縄以外のことも幅広く取材・執筆します。

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