AERAがミュージカル特集を組み、山崎さんに取材したのが3年前。ミュージカルを巡る状況は今、大きく変わった。

山崎:ミュージカルというワードが認知されるようになり、いろいろなミュージカル俳優がテレビに出演するチャンスが増えました。音楽番組「FNS歌謡祭」では毎年ミュージカルコーナーをやらせていただけるようになりました。僕が「下町ロケット」に出演する前やドラマに出たての頃はまったくなかった状況です。以前はミュージカル俳優に知名度もありませんでしたから。昨年の「FNS歌謡祭」の現場では、感動していました。こんな時代になったんだ、と。

 それと、僕はディズニーの映画版「美女と野獣」で野獣の吹き替えをやらせていただきましたが、「ラ・ラ・ランド」や「グレイテスト・ショーマン」などミュージカル映画のヒットもあった。いろんな要素がこの3年でギュッと詰まったことは大きいです。

 今後の目標を尋ねると、「目標を立てるのはちょっと違うのではと思っている」と言う。

山崎:目の前にあること、与えられていることにどれだけ気持ちを入れられるかでしかないのでは、と思っているんです。落語家を演じた18年の秋ドラマ「昭和元禄落語心中」(NHK)は、これまででいちばん大変な作品でした。「モーツァルト!」の千秋楽の後すぐに撮影に入ることになっていたので、公演期間中に落語の先生のところに通い、20ページくらいある台本を、古典落語8演目の所作付きで覚えました。追い込まれながらも必死にやったことで、僕は「エール」につながったと思っているんです。与えられた仕事を一生懸命やることで、点がつながっていくように、最終的に自分が本当に幸せだと思う景色が見えたり、頑張れば頑張るほどすてきな人との出会いがあったり。そう思うと、今は気負って夢を持つというよりは、目の前のことに打ち込む時期なのかもしれない。30代はいろいろなチャレンジをしながら、役者としても歌い手としても幅を広げていこうと思っています。

(フリーランス記者・坂口さゆり)

AERA 2020年3月30日号より抜粋