ロンドンのトラファルガー広場にある「ロンドン・ナショナル・ギャラリー」。この八角形の部屋を中心に、十字に建物がのびている(Phil Sayer, (c)The National Gallery, London)
ロンドンのトラファルガー広場にある「ロンドン・ナショナル・ギャラリー」。この八角形の部屋を中心に、十字に建物がのびている(Phil Sayer, (c)The National Gallery, London)

「美術の百科全書」と言われるロンドンの美術館から、「ひまわり」がやってきた。東京の「ひまわり」とハシゴして見られるのは、おそらく最後のチャンスになる。AERA 2020年3月30日号では、国立西洋美術館で開催予定の「ロンドン・ナショナル・ギャラリー展」で初来日したゴッホの「ひまわり」の魅力に迫った。

【写真特集】ゴッホの「ひまわり」をハシゴして見る

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 イベント自粛の嵐は、美術界にも吹き荒れている。3月17日、東京都内で開催されているはずの約100の展覧会のサイトをチェックしてみると、臨時休館やイベント中止、時間短縮などを決めていたのは、なんと約8割。「刀剣博物館」(東京都墨田区)などマニアックな博物館の企画展から、春休みの大型美術展まで、多くの展覧会が臨時休業に追い込まれていた。

 なかでも、美術ファンをもっともヤキモキさせている展覧会のひとつがこちら。国立西洋美術館(東京都台東区)で3月3日から開催予定だった「ロンドン・ナショナル・ギャラリー展」だ。新型コロナウイルスの影響で、3月23日現在、開幕が延期されている。

 ルネサンスから20世紀初頭までの西洋美術の歴史を作品でたどれる、「美術の百科全書」という異名もあるロンドン・ナショナル・ギャラリー。そんな世界屈指の美術館から、すべて日本初公開となるレンブラント、ゴッホ、モネ、ルノワール、フェルメールなど、61点のお宝作品がやってきた。

 英国で200年近い歴史のある同館でも、これだけ長期にわたる大規模な“引っ越し展”は、初の試みになるという。

「2020年、オリンピックという最大級のイベントを開く日本との関係性を強めるとともに、欧米で開催するのとはまた違ったインパクトを、美術に精通する日本のみなさんに感じてもらえればと思っています」

 ロンドン・ナショナル・ギャラリーの学芸部長クリスティン・ライディングさんは、過去にない海外での大規模展の開催に至った理由をそう語る。

 この決断によって実現したのが、教科書級の名画たちの前に実際に立って鑑賞できるという贅沢(ぜいたく)。「実物を見る」ことには、いつの時代にも特別な意味があるという。今回の展覧会を監修した、国立西洋美術館主任研究員の川瀬佑介さんは言う。

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