大愚元勝(たいぐ・げんしょう)/1972年8月生まれ。僧侶になりたくないと寺を飛び出したが、38歳で僧侶の道を進むと決意。近著に『苦しみの手放し方』(ダイヤモンド社)(写真:大愚元勝さん提供)
大愚元勝(たいぐ・げんしょう)/1972年8月生まれ。僧侶になりたくないと寺を飛び出したが、38歳で僧侶の道を進むと決意。近著に『苦しみの手放し方』(ダイヤモンド社)(写真:大愚元勝さん提供)
YouTubeの視聴者は10代から80代までと幅広い。講演会にはさまざまな年齢層がやってくる。経営者のファンも多いという(写真:大愚元勝さん提供)
YouTubeの視聴者は10代から80代までと幅広い。講演会にはさまざまな年齢層がやってくる。経営者のファンも多いという(写真:大愚元勝さん提供)

 YouTubeで「現役僧侶が現代人の悩みに答える」という一風変わったコンテンツがヒットを飛ばしている。動画配信には「一対一以上の可能性」もあるという。AERA 2020年3月30日号から。

【写真】講演会の様子はこちら

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「もう、本当に泣けてきた」「自分の事言われてるみたいで胸に刺さります」「少し自分にも取り入れてみます」……。

 これらは、YouTubeチャンネル「大愚和尚の一問一答」で配信された説法「自分を変えていくヒント」に対し、視聴者から寄せられた声だ。同番組は、愛知県小牧市で540年続く福厳寺の31代住職、大愚元勝和尚(47)が2014年にスタートした。大愚和尚が寄せられた悩みに対し「答え」を語っていくスタイルで、口コミで人気が広がった。月5千人ペースで登録者数が増加し、3年目には登録者数が19万6千人を超えた。

「最初の数年は、お檀家さんから反発がありました」

 大愚和尚はそう明かす。当初は、弟子と2人でひっそりと始めたのだという。

 きっかけは、過食と拒食、リストカットを繰り返す少女の相談を、その母親から受けたことだった。客間で母親の話を聞いていると、隣に座っていた少女がいきなり手首を切った。幸いにも傷は浅く、出血はすぐ止まったが、大愚和尚は「このまま黙っていてはいけない」と感じたという。

 少女は悩みを人に言えずに苦しんでいる。家族はそんな少女を見ることに苦しみを覚えている。葛藤を抱え、もがき苦しんでいる人々がいる。

「仏教は、お釈迦様によって発見され、伝えられた『苦しみの手放し方』です。もっと積極的に、それを人々に伝える努力をすべきだと。その手段として、YouTubeに思い至ったのです」

 毎週1~2回、大愚和尚はカメラを前に「苦しみの手放し方」を語る。中には1時間近くに及ぶ説法もある。「あまり長いと見る人が離れてしまう。3分くらいにまとめた方がいい」とアドバイスを受けたこともあるが、あえて「そのまま」にこだわっている。

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