2000年代から二つの病院で小児心理外来を開き、発達障害者支援センターや児童相談所などの嘱託医をいくつも兼務する。国をあげて取り組んだ「早寝早起き朝ごはん」運動を推進。大学で特別支援教育に携わる教員を育てつつ、研究と臨床現場での研鑽(けんさん)を両立してきた。

「私のこれまでの知見、経験の集大成がアクシスになる。特性は消えないけれど、彼らの生きにくさ、やりづらさは下がる。そうやって小中高の時点から支援し続ける仕組みが必要です。大げさに聞こえるかもだけど、私は人間を変えたい」

 その決意は、80代の親がひきこもり続けてきた50代の子の生活を支える「8050問題」の解決に直結する。ひきこもり状態にある人は全年齢合わせると推定100万人超。厚生労働省のひきこもり支援のガイドラインでは、問題の背景に発達障害など精神障害があることが指摘されている。

 茨城県に住む34歳の男性は、20歳を過ぎて成田と出会った。こだわりが強く、集団行動ができなくてひきこもっていた。両親が楽しそうに成田に会いに行くのを見て、自分も行きたくなった。

 ああしろ、こうしろと怒られたりしない。いつの間にか自尊感情が芽生え、生きることに前向きになれた。「こんないい子を育てたことを自信にして」と言われて号泣した両親も明るくなった。男性は「あのままだったら大人のひきこもりになったかも。成田先生は、家族全員の道しるべになってくれた」と顔をほころばせる。今は非常勤ながら仕事を続けている。(文/島沢優子)                                                  

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