「最近目立つのは人事部門の受講生です。これまで人事では経験と勘が重視され、データに基づいた意思決定から取り残されてきましたが、この1~2年で社内にある社員や採用のデータを人事施策に活用しようとする企業が増えています」(堅田社長)

 数学を学ぶことで、組織を動かした人もいる。

 出版取次大手に勤める男性(32)は、私立大学の文学部社会学科出身。大学受験では数学を選択しなかったが、社会人になって数学の必要性を感じる場面が増えたという。

「例えば、平均で毎月どれくらい売り上げが伸びたかを出すときは、一般的な(算術)平均の考え方ではなく、幾何平均を使う。自分の中に引き出しを増やしたくて、勉強を始めました」

 最初は独学で勉強していたため、つまずくことが多かった。そこで、ネット検索で見つけたデータミックスの講座を18年7月から6カ月間受講した。授業は週1日約3時間だが、授業後にはクラスメート有志数人で市販書籍の輪読会も行い、加えて毎日2~3時間自習し、集中的に勉強した。

 数学を学んでいると、「これはあの課題解決に使えるかもしれない」と感じることが多く、業務で試してみることにした。

 ある施策の効果について、立てた仮説が正しいかどうか統計学的に判断する「仮説検定」を使って検証し、部内で共有。「さまざまな手法でデータを分析し、意思決定の際にも勘や経験でなくデータを使って判断したほうがいい」と社内で訴えたところ、19年4月にAI推進専門の部署ができ、自身も配属された。

「ビジネスの下地があったからこそ、数学やデジタルの学びを業務に生かすことができました。自分はまだ入門レベル。これからも勉強を続けて、引き出しを増やしていきたい」

(編集部・深澤友紀)

AERA 2020年3月23日号より抜粋