金融業界におけるAI・デジタル人材重視の動きは、トップの人事にも見て取れる。今年1月、三菱UFJフィナンシャル・グループは亀沢宏規副社長(58)が4月1日付で社長に就任すると発表した。亀沢氏は東京大学大学院理学系修士課程を修了し数学を専攻。現在はデジタル事業を担っている。これまで法学部や経済学部などの文系出身者が独占してきた国内の3大メガバンクグループで、理系のトップが誕生するのは初めてだ。

 だが、実は保険業界ではすでに理系トップが誕生している。明治安田生命の根岸秋男氏(61)、日本生命の清水博氏(59)は、ともに保険料の算出などを行うアクチュアリー(保険数理士)出身だ。

 5大商社においては3社が理系社長。総合商社はAIやあらゆるモノがネットにつながるIoT、ビッグデータの活用による「第4次産業革命」のただなかにいる。ビジネスモデルの変革を求められるなか、新しい技術に強い人材がトップに立つのは、自然の流れといえる。

 マイナビHRリサーチ1課の東郷こずえ課長は、数学やデジタル人材の採用強化の動きについてこう話す。

「日本では(職務が限定された)ジョブ型雇用はまだ少なく、総合職採用が主流のため、新卒採用では一部の企業で行われ始めたところです。デジタル化が進み、どの業界、職種でもデータ活用が必要となるなか、その基礎となる数学や統計の力は、今後さらに重宝されるでしょう」

(編集部・深澤友紀)

AERA 2020年3月23日号より抜粋