一方、バイデンにも懸念材料はある。

 トランプや共和党重鎮はすでに、自らの弾劾裁判のきっかけとなったウクライナ疑惑について、言及を始めた。弾劾手続きはそもそも、バイデンの息子ハンター・バイデン(50)が、ウクライナのエネルギー会社の取締役だったことがきっかけで、トランプがウクライナ首脳に捜査を要請したことがきっかけだ。バイデンが民主党の大統領候補となった場合、トランプやホワイトハウスは、ハンターが不正にエネルギー会社の報酬を受け取っていなかったかどうか、しつこく糾弾するのは明白だ。

 民主党と同様、共和党でも予備選が行われているが、有力な敵対候補のいないトランプが、共和党の指名候補となるのは確実だ。11月にある本選挙で、バイデン、あるいはサンダースがトランプに勝てるのか。

 いずれにせよ、女性や同性愛者、非白人など多様な候補が乱立した民主党指名争いは、70代後半の白人男性同士の戦いへと変わった。今回のスーパーチューズデーでは、ダイバーシティーによる「変化」は、米国においてもまだ遠いことを見せつけられた。(文中敬称略)(ジャーナリスト・津山恵子=テキサス州オースティン)

AERA 2020年3月16日号より抜粋