※写真はイメージ(gettyimages)
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 加藤シゲアキさんの最新刊『できることならスティードで』は、文芸誌「小説トリッパー」に3年にわたって連載した“旅”をテーマにしたエッセイ集だ。小説『ピンクとグレー』で作家デビューし、作家生活も今年で9年目。AERA2020年3月9日号では「書く」ことへの向き合い方について、話を聞いた。

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──「浄土」では、ジャニー喜多川さんの死について書かれています。葛藤はありましたか。

 人の死を描くには、どういう精神性で向き合うかが大事だと思っています。ともすれば、死を利用したことになってしまいますし、「ネタにした」とは思われたくなくて。亡くなった方が読んだとしても喜んでもらえるだろう、というところまで持っていきたいですし、“書く意味”のようなものも大切だと思っています。社長(ジャニーさん)は、僕を芸能の世界に呼んでくれた人なので、「芸能で返そう」という気持ちはありました。事務所のなかでは小説を書いているのは僕だけなので、書くことが一つの恩返しになるのではないかと。あまり暗くならないように書きましたが、読んだ方が笑いながら泣いていたら、それが一番いいですよね。

──デビュー作『ピンクとグレー』が発売されたのが2012年1月。作家生活も9年目に入りました。

 気持ちは3年目ぐらいですが(笑)。『ピンクとグレー』を書いたときは最初で最後の一冊になるかもしれないと思っていたので、自分のすべての引き出しを使いました。発売に合わせ書店回りをしたのですが、ある書店員の方に「すごく良かったから応援したいけれど、書き続けない限り、書店として応援し続けることはできないよ」と言われて、「なるほどな」と。僕は賞を取ってこの世界に入ったわけではないので、お邪魔させていただいている、という感覚もあります。書き続けることが、誠実であるということなのかとも思います。

 少し前に、文章も書く若いアイドルの方にお会いしたら、「いろいろな編集者から、アイドルで作家を続けている加藤さんの姿勢を見習え、と言われています」と。自分の知らないところでロールモデルになっていたんです(笑)。たしかに、NEWSとしての仕事も作家の仕事も、精一杯取り組んできました。大切なのは、続けることなのかなと思います。

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