前出の佐藤さんの長男は、休みに入って「おいしい味噌汁は出汁がポイント」と、自らカマスを釣り、煮干し作りを始めた。兄弟二人で保存食作りも。

「生活の中に学びの種はいくらでもあります。自身の興味発で体験を重ねることがなによりも大事。今回の長期休暇がそういう機会になれば、有意義に転じられる」(佐藤さん)

 子どもが長年願っていたもののかなわなかった「ペットを育てる時間」に充てた女性もいる。

 女性はフルタイムで働き、帰宅時間も遅い。小学6年の息子が家に一人でいたら、ゲームやテレビ三昧になるのが目に見えていた。長期休暇をどう過ごさせるか考えあぐねていたとき、たまたまペットショップの前を通りかかった。

「インコのヒナを見つけ、これだ!と思いました。犬やは飼えませんが、インコなら大丈夫」

 生後1カ月のインコは1日4食の食事が必要。アワなどを含んだ人肌の温度のエサを作り、食べさせ、片付けるまでに1回当たり40分近くかかる。人間の赤ちゃん同様、成長に応じて食事は変えなければならない。

「ヒナの世話という役割が生活の張りになり、生活リズムも作り出す。命と向き合う時間を作れてよかったと思います。日々、成長が実感できるのも貴重な体験です。ヒナは新学期のころには自分でエサを食べられるようになります」

 突然の休校要請に不安や戸惑いは尽きない。しかし同じ過ごすのなら、有意義な時間にしたいもの。ピンチをチャンスに変えるヒントは足元の身近なところにある。(編集部・石臥薫子、石田かおる、フリーランス記者・宮本さおり、大楽眞衣子)

AERA 2020年3月16日号