マスクの供給不足から、パニック状態になりつつある国内。個人レベルであれこれ対策が取られているが、専門家は効果に疑問を持つ (c)朝日新聞社
マスクの供給不足から、パニック状態になりつつある国内。個人レベルであれこれ対策が取られているが、専門家は効果に疑問を持つ (c)朝日新聞社

 新型ウイルスの感染拡大に伴い、マスク不足が深刻化している。急騰する需要に加え、 中国からの輸出減少が背景にある。花粉シーズンを迎え、現状はしばらく続く見込みだ。 AERA2020年3月16日号から。

【「新型コロナウイルス」や「花粉」の粒子の大きさを比較すると…】

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 マスク不足が止まらない。横浜市に住む40代の会社員女性の手持ちは、15枚ほどになった。

 10枚入りの袋数個を購入したのは昨年12月。年が明け、新型ウイルスの感染拡大が報じられるようになると、あっという間に店からマスクは消えた。現在、女性は1週間を2枚のマスクでしのいでいる。中にはガーゼを当てる。マスク自体は洗わないが、ガーゼを洗って交換することで、少しでもマスクを長持ちさせようとしている。

「どこに行っても手に入らないので、苦肉の策です」(女性)

 国は感染者が多い北海道の住民用を確保するため、メーカーから400万枚の買い上げを決めた。マスクをつけずに公衆の面前でせきをすれば、厳しい視線を浴びる雰囲気もあり、国民が不安を募らせている。

 医療現場ですら、スタッフ用マスクが不足し、混乱が始まっている。

 日本衛生材料工業連合会(東京)によれば、2018年度に国内で生産されたマスクと輸入されたマスクは計約55億3800万枚。8割が輸入品で、輸入品のうち85%ほどが中国製だった。今回の中国発の新型コロナウイルス問題では、需要の高まりと中国からのマスクの輸入が一気に減ったことから、たちまちマスク不足に陥った。

「花粉の季節も重なり、今の需要が続くなら、十分な供給ができるようになるまでには、まだしばらくかかると思います。中国からの輸出が増えてくるのを期待するしかない」(担当者)

 そんな中、注目されているのは、冒頭のようなガーゼを使った利用法や、手作りマスク、使い捨てマスクを洗って再利用するといった方法だ。

 本当に有効なのか。あるメーカーの担当者はこう言う。

「マスクを消毒して再利用する方法については、フィルターの性能が正常に働くかどうかを確認しないと何とも言えない。現時点では推奨はしません」

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