その経験から、今村さんは今回、全国どこからでも子どもたちが朝夕にホームルームに参加できる「カタリバオンライン」を開設した。「親子だけでない第三者が介在することも重要」と考える。ウェブ会議アプリ「zoom」を利用。子どもたちはほかの仲間たちと顔を見ながら、朝はその日の予定を話し、夕方のホームルームで振り返りをする。ホームルーム以外でも、学びのコンテンツや、趣味について語りあえる部屋の利用なども可能だ。

 ただ、親がいない間に子どもがネットに触れられる環境にしてしまうと、結局、動画見放題になるのが怖い。二人の小学生の子どもを持ち、書道教室を開く女性(39)は、子どもの行き場が失われている現状に疑問を呈す。

「子どもに家以外の居場所を作ってあげることが必要なのでは。学童や学校の臨時受け入れの開設は認められるのに、習い事はダメというのもおかしい」

 子どもに安心感を与えるには、親が動揺しないことも重要だ。小1の息子の学校から自宅で過ごすよう強く求められているという横浜市の女性(40)は、外出は控えつつも「子どもにとってこの休みが、宿題ばかりで家に閉じ込められた最悪の思い出にならないようにすると心に決めた」と話す。

「宿題もランドセルに入りきらないくらい持って帰りましたが、ゆっくりやればいいし、漫画をたっぷり読むのもOKと言っています。うちはダイヤモンド・プリンセス号が家から見える環境で、関わった医療関係者なども近くにいる。こういう機会だからこそ、コロナという言葉を安易に使って、からかいやいじめが起きないようにしようとか、親子でじっくり話し合う機会にしています」

 臨時休校となって、多くの親が不安に感じている防犯や安全については、子どもの危険回避研究所の横矢真理所長に聞いた。横矢さんがまず勧めるのは「不安の棚卸し」だ。何が心配かを箇条書きし、危険度を順位づけしながら、対策も書いていく。周囲の環境や子どもの年齢、性格によっても違うので、親子でよく話し合うことが大事だ。夜だと怖くて眠れなくなる子もいるので、明るい時間帯に話すのがいいという。

災害への備えも忘れずに」と横矢さん。子どもが留守番している時に大地震が起きるかもしれない。家具の配置の見直しなどもしておこう。

 ネットに接触する時間が長くなる分、SNS絡みの犯罪にも要注意だ。横矢さんは言う。

「SNSでは自分の身元は明かさない。近場の写真は載せない。匿名でもすぐにばれることもあることを伝えてください」

 不安と隣り合わせの長期休暇。親は子どもの心身のケアにいつも以上に注意したい。(編集部・石臥薫子、石田かおる、フリーランス記者・宮本さおり、大楽眞衣子)

AERA 2020年3月16日号